ラブラドル海流

ラブラドル海流

ラブラドル海流は、グリーンランドの南西部を起点にラブラドル海を南下する冷たい海流です。この海流は低い温度と塩分濃度を持っており、特にニューファンドランド島沖のグランドバンクス付近では暖かいメキシコ湾流と交わり、潮目が形成されます。その結果、豊富な漁場が出現し、多くの漁業活動が行われています。

しかし、この海流は航行に際して多くのリスクを伴います。ラブラドル海流は氷山を含む水流を抱え、特に濃霧が頻繁に発生するため、視界が悪化することが多いです。この状況は航海者にとって非常に危険です。実際、1912年4月14日には、イギリスの豪華客船タイタニック号がその処女航海中にラブラドル海流が運んできた氷山と衝突し、悲惨な沈没事故を引き起こしました。

この事故以降、アメリカとカナダは共同で国際海氷パトロールを設け、ラブラドル海流やその周辺の氷山の状況を監視し、定期的な通報を行っています。これは、また同様の事故を防ぐための重要な措置です。

ラブラドル海流には、その水量の面でも興味深い特性があります。グリーンランド近海から流入する水量は毎秒約750万トンですが、ラブラドル海流による流出量は毎秒約550万トンです。この約200万トンの違いは、ラブラドル海において深層水が沈降し、その水が北大西洋へ流れ込む要因となっています。ノルウェー海においては海嶺がその流れを阻害するため、ラブラドル海流の深層水は北大西洋の深層水の重要な源泉となるのです。

また、ラブラドル海流の影響を受けた地域では、特定の犬種が生まれました。ラブラドール・レトリーバーは、冷たい海水の中で漁業を手助けしていた犬が祖先です。また、ニューファンドランド犬もこの海流がもたらす環境で水難救助を行っていたことに起源があります。

このように、ラブラドル海流は漁業にとっての重要な資源を提供すると同時に、航海の安全に対する警戒を必要とする複雑な海流なのです。

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