ラム・チェンイン

ラム・チェンイン：香港映画界のレジェンド

ラム・チェンイン（林正英、1952年12月27日 - 1997年11月8日）は、香港映画史にその名を刻む、稀代の俳優、スタントマン、そして武術指導家でした。本名は林根宝。7人兄弟の3番目として生まれ、名門春秋戯劇学校で京劇を学びました。幼少期から培った武術と軽やかな身のこなしは、後の彼のキャリアを決定づける重要な要素となりました。

華麗なるキャリアの始まり

17歳でスタントマンとして映画界入りを果たしたラム・チェンイン。1971年、『ドラゴン危機一発』への端役出演を皮切りに、数々の作品でスタントマンとして活躍します。そして、運命の出会いが訪れます。それは、レジェンド、ブルース・リーとの出会いでした。リーの目に留まり、武術指導やスタントマンとして抜擢された彼は、『ドラゴン怒りの鉄拳』や『死亡遊戯』にも出演。特に『燃えよドラゴン』では、わずか20歳にして武術指導助手としてリーの右腕となり、絶大な信頼を得ました。

サモ・ハン・キンポーとの出会い、そして『霊幻道士』の大成功

ブルース・リー没後、ラム・チェンインはサモ・ハン・キンポー率いるスタントチーム「洪家班」に加入し、更なる活躍の場を広げます。1981年、『ユン・ピョウINドラ息子カンフー』ではユン・ピョウの師匠役を演じ、華麗なカンフーを披露。そして、1985年、彼の代表作となる『霊幻道士』で道士役を演じ、大成功を収めます。この作品によって、ラム・チェンイン＝道士というイメージが広く定着し、彼の代名詞となりました。

晩年と日本の思い出

晩年は、闘病生活の中、撮影現場に足を運び続けました。しかし、スタントマン出身の彼にとって、痛みを伴うアクションシーンは大きな苦悩でした。涙を呑んでスタントをスタントマンに託すこともありました。1997年11月8日、44歳という若さで肝臓癌のため逝去。最期まで仕事への情熱を燃やし続けました。私生活では、離婚後、息子と娘を男手一つで育て上げ、アメリカへの留学を支援するなど、深い愛情を持っていました。遺言により、愛用のサングラスと遺骨はアメリカに埋葬されました。

日本にも幾度となく訪れ、1984年には『香港発活劇エクスプレス 大福星』の日本ロケに参加。東京都内や山梨県、千葉県などで撮影が行われました。1992年には東京国際ファンタスティック映画祭'92に招待され、舞台挨拶などを行い、日本のファンと交流しました。

数々の作品と輝かしい受賞歴

ラム・チェンインは、数多くの映画やテレビドラマに出演し、その演技力と武術の腕前は高く評価されました。代表作としては、『霊幻道士』シリーズ以外にも、『ドラゴン危機一発』、『燃えよデブゴン』シリーズ、『五福星』シリーズなどがあります。また、『ユン・ピョウINドラ息子カンフー』や『五福星』で香港電影金像奨 最佳動作指導賞を受賞するなど、その功績は高く評価されました。詠春拳と截拳道の達人でもあり、その類まれな才能は、後世に大きな影響を与え続けました。

ラム・チェンインは、香港映画黄金期の象徴的な存在であり、彼の作品は今もなお多くのファンを魅了し続けています。その生き様と作品は、これからも語り継がれていくことでしょう。彼の名前は、香港映画史に永遠に刻まれています。

もう一度検索