ラリー・アブシャー

ラリー・アレン・アブシャーの生涯

ラリー・アレン・アブシャーは、1943年にアメリカ合衆国イリノイ州アーバナで生まれ、1983年に北朝鮮で亡くなるまでの人生は、多くの人々に衝撃を与えました。彼は、朝鮮戦争の後、北朝鮮に亡命した6人のアメリカ兵の一人です。彼の歴史的な逃亡とその後の生活は、当時の政治的な背景や人間ドラマを反映しています。

亡命の経緯

アブシャーは1962年5月28日、アメリカ陸軍の第1騎兵師団に所属している際に逃亡を決意しました。彼は在韓米軍基地を密かに脱出し、南北軍事境界線を越えて北朝鮮へと入国しました。19歳の若さでの大胆な行動は、当時の国際情勢における大きな冒険でした。この時、彼はアメリカでの地位を捨て、新たな人生を求めることとなります。

彼が北朝鮮に潜入してからしばらくの間、彼はただ一人のアメリカ人として同国にいたことから、心理的な孤立感や不安感もあったことでしょう。ジェームズ・ドレスノクと呼ばれる後の亡命者が同年8月に北朝鮮に辿り着くまでの3ヶ月間、アブシャーはその地で唯一のアメリカ人でした。

北朝鮮での生活

アブシャーは北朝鮮において、独自の生活を送りました。彼は他の脱走者と一緒に過ごし、当初は寺洞区域で共同生活を始めた後、さまざまな場所に住まいを移しました。北朝鮮政府は、彼らに言語教育や政治教育を行い、特に金日成の著作を読むよう強制しました。

ドレスノクの著書によると、アブシャーは朝鮮語を学ぼうと奮闘していましたが、表面的には彼の性格は単純であり、他の脱走者からいじめを受けていたことも明らかになっています。彼は数年間の共同生活を通じて、同居者たちに利用されることもありましたが、徐々に自立しさまざまな人間関係を築いていったと考えられます。

家族と結婚

1972年、北朝鮮政府により市民権が与えられたアブシャーは、当局が用意した女性と結婚しました。この女性は、タイ人であり北朝鮮に拉致された過去を持つアノーチャ・パンジョイという名でした。アブシャーの人生において、彼女との結婚は重要な瞬間であり、彼にとっての新たな生活の一環でもありました。

アブシャーは北朝鮮での生活を続けながら、国と自身の状況に対する葛藤を抱えていたことでしょう。彼には子どもがいませんでしたが、アノーチャとの結婚生活は、中国や他国との文化の交流としても機能していたと言えます。

死とその後

1983年7月11日、アブシャーは平壌で心臓発作により亡くなりました。彼の死は、脱走兵らに大きな衝撃を与えました。葬儀は北朝鮮政府によって行われ、彼の生涯が公に評価されることはありませんでしたが、彼の生活は多くの映画や文献で取り上げられ、歴史に名を刻むことになったのです。彼の墓は、横田めぐみが関与した事件の近くにあることで、さらなる注目を集めました。

アブシャーの人生は、個人の選択と政治的背景が交差する複雑な物語であり、北朝鮮におけるアメリカ人の脱走者たちの経験を象徴するものであるとも言えます。

もう一度検索