ラリー・メキシコ

ラリー・メキシコ：高地とドラマのグラベルラリー

メキシコの世界ラリー選手権（WRC）の一戦として知られるラリー・メキシコは、グアナフアト州レオン周辺で開催される、世界屈指のグラベルラリーです。かつては「ラリー・アメリカ」として開催されていましたが、2002年に名称変更、2004年にはWRCに昇格。モンテカルロやスウェーデンに続く、WRCシーズンの序盤を飾る重要なイベントとして、毎年多くのファンを魅了しています。

高地と変化に富んだコース

ラリー・メキシコ最大の特徴は、メキシコ中央高原の高地で開催される点です。標高2,000mを超える山岳地帯や平野がコースを構成し、最大で2,700mに達する場所もあります。急勾配のダウンヒルステージも存在し、ブレーキへの負担はWRCの中でも特に大きいとされています。2016年には、大手ブレーキメーカーであるブレンボの技術者から、全14戦の中で最もブレーキに厳しいイベントであると評価されたほどです。

さらに、高地という環境はエンジンにも大きな影響を与えます。空気の薄さから、1.6リッターターボエンジンは性能の約1/4を失うとされており、チームは高地仕様へのセッティング調整に頭を悩ませます。

コースは乾燥したラフな路面が多く、砂埃が舞い上がるのも特徴の一つ。世界遺産にも登録されているグアナフアト市街地では、歴史的な銀鉱山の地下道を通過するスーパーSSが設けられるなど、変化に富んだコースレイアウトとなっています。

過酷な環境とドラマ

3月開催ということもあり、凍えるようなモンテカルロやスウェーデンとは対照的に、メキシコでは気温30度前後の暑さとの戦いとなります。マシンのオーバーヒート対策はもちろん、ドライバーの体力も大きく問われるタフなラリーなのです。

また、ラリー・メキシコは総走行距離に占めるスペシャルステージ（SS）の割合が非常に高く、2016年にはWRCでは1986年のツール・ド・コルス以来となる約80kmにも及ぶ超ロングステージが設定されました。さらに、サービスパークの屋内設置やコンパクトなルート設定など、ラリー運営の面でも先進的な取り組みを行っており、WRCの発展に貢献しています。

2020年は新型コロナウイルスの影響で、最終日のSSが全て中止となりましたが、それ以外の年においては、数々のドラマを生み出してきました。2015年には、オィット・タナックのフォード・フィエスタが湖に転落するアクシデントが発生。奇跡的な復活劇は「タイタナック」と呼ばれ、大きな話題となりました。2017年には、クリス・ミークが最終SSでコースアウトしながらも、首位を守り切ったという劇的な展開が繰り広げられました。

歴史と未来

1979年から続くラリー・メキシコは、その歴史の中で多くの名ドライバーたちを輩出し、数々の名勝負を生んできました。高地と砂埃、そして熱狂的なファン。これらの要素が一体となり、世界最高峰のラリーの一つとして、ラリー・メキシコは今後もその存在感を示し続けるでしょう。2009年にはローテーション制によりWRCカレンダーから外れましたが、その後復帰。コロナビールを冠スポンサーに迎え、現在もWRCカレンダーの重要な位置を占めています。

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