ランドルフ・コールデコット

ランドルフ・コールデコット：ユーモアと温かみに満ちた絵本のパイオニア

ランドルフ・コールデコット (1846年3月22日 - 1886年2月12日) は、イギリスを代表するイラストレーター、そして絵本作家です。彼の作品はユーモラスでありながら温かい作風で知られ、現在でも多くの人々に愛されています。その独創的な表現方法は、現代絵本の礎を築いたと高く評価されています。

平凡な始まりから華麗なる転身

コールデコットはイングランド北西部チェスターで会計士の家に生まれました。銀行員としてキャリアをスタートさせ、マンチェスターの銀行で勤務しながら、マンチェスター美術学校の夜間コースに通い、絵画の腕を磨きました。日々の業務の傍ら、雑誌や新聞への挿絵制作を手がけ、才能を開花させていきます。26歳にして銀行を辞め、ロンドンへと移り住み、本格的にイラストレーターとしての道を歩み始めます。ロンドンでは、スレード美術学校にも短期間通学し、研鑽を積みました。

エドマンド・エヴァンズとのコラボレーションと絵本作家としての成功

1870年代後半からは、彫版師のエドマンド・エヴァンズとタッグを組み、16冊もの子ども向け絵本を制作しました。これらの絵本はコールデコットの代表作となり、彼の名を広く知らしめることになります。絵と文章が絶妙に調和し、物語の世界を豊かに広げる彼の作風は、多くの読者を魅了し、現代絵本に多大な影響を与えました。

病魔との闘いと夭逝

コールデコットは、晩年、病に悩まされ、冬は温暖な土地で療養する日々を送っていました。1886年2月、フロリダへの旅の途中で病状が悪化し、39歳の若さでこの世を去りました。彼の死は、イギリスの芸術界に大きな損失をもたらしました。

絵本史に刻まれた功績とコールデコット賞

ウォルター・クレイン、ケイト・グリーナウェイらとともに、イギリス絵本の新たな表現形式を確立した三大画家のひとりとして数えられるコールデコット。その絵とことばが織りなす世界観は、現代絵本の源流のひとつと言われています。没後、彼の功績を称え、優れた絵本に与えられるコールデコット賞（コールデコット・メダル）が創設されました。この賞は、今日でも、世界中の絵本作家にとって最高の栄誉のひとつとなっています。

まとめ

ランドルフ・コールデコットは、銀行員という堅実な職から、独創的な絵本作家へと転身し、数々の名作を世に送り出しました。彼の作品は、ユーモアと温かさ、そして独特の芸術性で、現代においても人々の心を捉え続けています。その功績は、コールデコット賞という形で未来へと受け継がれ、絵本界に不滅の足跡を残しています。コールデコットの作品は、時代を超えて愛される、まさに不朽の名作と言えるでしょう。彼の生涯と作品を通して、絵本の持つ力、そして芸術の素晴らしさを改めて感じることができます。

参考文献

ジョン・バンクストン『現代絵本の父 ランドルフ・コールデコットの生涯と作品』吉田新一訳・解説、絵本の家、2006年
三宅興子『イギリスの絵本の歴史』岩崎美術社、1995年
* ヘンリー・ブラックバーン『百年前の絵本―R・コールデコットの前半生』ブック・グローブ社、1997年

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