ランバ (まとい布)

マダガスカルの伝統衣装「ランバ」

ランバは、マダガスカルで伝統的に着用されている、長方形の布を体に巻き付ける衣服です。「まとい布」とも訳され、男女ともに着用します。素材、色柄、用途は多岐にわたり、マダガスカルの文化や歴史を色濃く反映しています。

ランバの多様な素材と製法

日常使いのランバは、ラフィア椰子の繊維、豚皮、綿、靭皮繊維などで作られます。葬儀や先祖供養の祭り「ファマディハナ」で用いられるランバは、絹やコブウシの皮といった特別な素材が使われることが多いです。色柄も豊富で、絞り染め、純白、赤白黒のストライプなど、地域や民族によって様々なバリエーションが見られます。サカラヴァ人の村では緑と茶色の幾何学模様が特徴的なランバが織られ、メリナ人の元貴族は、複数の色を使った複雑な織りのランバを好みました。近年では、インド製の綿やレーヨンで作られたランバも広く流通しています。

ランバの文化的意義

ランバは、単なる衣服としてだけでなく、文化的な意味合いも深く持っています。例えば、絹で織られた「ランバメナ」は、亡くなった家族を弔う際に遺体を包む布として用いられます。また、一部の地域では、婚約時にランバを交換する習慣があります。外交儀礼上の贈り物として用いられることもあり、1886年にはマダガスカル女王ラナヴァルナ3世からアメリカ合衆国大統領グロヴァー・クリーヴランドに「ランバ・アクトゥファハナ」が贈られました。

「ランバ・アクトゥファハナ」は、メリナ人の貴族制と密接に関わっており、複雑な幾何学文様は、メリナ人独自の高度な織りの技術によって生み出されました。フランス植民地時代には、このような階級を示すデザインは抑制されましたが、近年では伝統的なランバへの関心が高まり、生産も回復しています。国際的な美術館では、クモの糸を用いたランバ・アクトゥファハナなど、ユニークな作品が展示されることもあります。

ランバの生産

伝統的なランバは、床に置いた水平な織機で織られていました。機織りは女性の仕事で、家族の衣服を織るだけでなく、余剰分を市場で販売することもありました。この習慣は、特に中央高地のメリナとベツィレウで一般的でした。

ランバの種類

ランバには、用途や地域によって様々な種類があります。

ランバフアニ (Lambahoany): 最も一般的なランバで、木綿のプリント生地で作られています。日常生活で幅広く使われ、衣服としてはもちろん、毛布、おんぶ紐、袋、テーブルクロスなどとしても活用されます。
ランバ・アクトゥファハナ (Lamba akotofahana): 絹織りのランバで、複雑な幾何学文様が特徴です。
ランバ・ムパンザカ (Lamba mpanjaka): 富裕層や高齢者が着用する儀礼用のランバです。
ランバメナ (Lambamena): 葬儀で遺体を包む布として用いられる、赤い絹のランバです。
ランバ・アリンヂャヌ (Lamba arindrano): 絹と木綿を混ぜて織ったランバです。
ザブ＝ランディ (Jabo-landy): 絹とラフィア椰子の繊維を混ぜて織ったランバです。
ライマサカ (Laimasaka): サカラヴァ人の伝統的なランバで、ラフィア椰子の繊維で作られ、イカット染めで幾何学文様が施されています。
サラカ (Salaka): ふんどしとして用いられる、細長いランバです。

ランバの着こなし

ランバの着用方法は、地域や性別によって異なります。一般的に、男女ともに腰に巻き付けるように着用します。女性は胸の下まで巻き付けてドレスのように着ることが多く、男性は肩に掛けて羽織るように着ることが多いです。また、白地の細いランバを肩にかける着こなしは、「優雅さ、尊厳、女性らしさ、伝統尊重」を表すものとされています。


ランバは、マダガスカルの文化、歴史、そして人々の生活に深く根ざした、重要な要素です。その多様性と美しさは、マダガスカルを訪れる人々を魅了し続けています。

参考文献

『マダガスカルを知るための62章』飯田卓、深澤秀夫、森山工編著、明石書店、2013年

外部リンク

Lamba Gallery 1
* Lamba Gallery 2

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