ラン・チリ航空621便墜落事故

ラン・チリ航空621便墜落事故：グリーンクロスの悲劇

1961年4月3日、ラン・チリ航空（現LATAM チリ）の621便、通称「グリーンクロスの悲劇」として知られる航空機墜落事故が発生しました。この事故は、マケウエ空港を離陸し、ロス・セリージョス空港へ向かう途中のDC-3型機がアンデス山脈に墜落したもので、その機体は長らく行方不明となっていましたが、2015年1月に発見されました。

事故の概要

事故機は、1943年に製造されたDC-3（シリアルナンバー9716、登録番号CC-CLDP、210号機）で、プラット・アンド・ホイットニー R-1830エンジンを搭載していました。事故当時の飛行時間は18,299時間でした。621便は、ガンボア空港からエル・テプアル国際空港、マケウエ空港を経由し、ロス・セリージョス空港へ向かう予定でした。

離陸後、雨の中を飛行していたため、主翼とプロペラに着氷が発生し、飛行高度の低下が要請されました。その後、サント・ドミンゴの無線標識を最後に消息を絶ちました。捜索の結果、リナーレス近郊の山腹で機体の残骸が発見され、墜落により乗員乗客全員が死亡したことが確認されました。

犠牲者

この事故で、乗員4名、乗客20名、計24名が犠牲となりました。乗客には、チリアマチュアサッカー協会の代表やチリ中央サッカー協会（現在のチリプロサッカー協会の前身）の理事に加え、クルブ・デ・デスポルト・グリーン・クロスの選手8人、トレーナー、コーチが含まれていました。特に、コパ・チリに出場する予定だったグリーンクロスの選手たちが多数含まれていたことは、チリのサッカー界に大きな悲しみをもたらしました。この事故を悼み、同年のコパ・チリは「コパ・チリ・グリーン・クロス」と命名されました。

事故後の影響

事故当時、グリーンクロスはオソルノ選抜とのアウェー戦を1-1で終え、帰路についていました。選手たちは2機に分乗しましたが、より経由地の少ない621便に主力選手が搭乗していました。このことが、後のホーム戦での0-1の敗北とチームの敗退につながりました。事故後、グリーンクロスは各方面から支援を受け、ボカ・ジュニアーズからは元アルゼンチン代表ゴールキーパーを含む4選手が無償でレンタル移籍しました。しかし、チームは1963年に2部リーグへ降格し、1965年にはデポルテス・テムコと合併する道を選びました。

機体の発見

尾部を除く機体は長年行方不明でしたが、2015年1月、マウレ州で発見されました。発見された機体の残骸は比較的良好な状態を保っており、人骨も確認されました。発見場所は標高3,200mで、以前の予想地点より70km北でした。現場の荒廃を防ぐため、正確な地点は伏せられています。

グリーンクロスの象徴

犠牲者の葬儀はチリ中央サッカー協会で行われ、グリーンクロスの選手たちの棺は協会の殿堂に安置されました。ただし、元選手カルロス・アル＝ノール・パラ氏によると、実際に安置されているのは遺体ではなく、灰や石であり、棺は象徴的なものに過ぎないとされています。

まとめ

ラン・チリ航空621便墜落事故、通称「グリーンクロスの悲劇」は、チリのサッカー界だけでなく、社会全体に深い傷跡を残した出来事です。事故から長い年月が経ちましたが、その記憶は今もなお、多くの人々の心に刻まれています。

この事故は、航空安全の重要性を再認識させるとともに、スポーツチームを失うことの悲劇を物語る教訓として、後世に語り継がれるべき出来事です。

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