ラ・ルヴィエールとル・ルーにあるサントル運河の4つのリフトとその周辺 (エノー州)

ベルギーのエノー州、ラ・ルヴィエールとル・ルーにあるサントル運河には、ユニークな船舶昇降機が4基存在します。これらの水力式のボートリフトは、1998年にユネスコの文化遺産として登録され（ID856）、19世紀末から20世紀初頭の産業技術を伝える貴重な遺産となっています。

サントル運河は、ムーズ川とエスコー川を繋ぐ全長7kmの運河ですが、その水位には66.2mもの高低差があります。この高低差を克服するために、1888年に高さ15.4mのリフトがHoudeng-Goegniesに、そして1917年にはさらに3基の、それぞれ16.93mのリフトが建設されました。これら4基のリフトは、世界遺産登録物件にもなっています。

各リフトは巧妙な仕組みで動きます。二重構造になっており、2つの垂直に移動するタンク、あるいは潜函が鉄柱によって中央に支えられています。これらのタンクは水圧で連結されており、片方が下がるともう片方が上がる仕組みで、重量も釣り合うように設計されています。まるで巨大なバランスのように、水圧を利用して船を効率的に運河の高低差を乗り越えさせる技術は、当時の技術力の高さを見事に示しています。

これらのリフトは、19世紀末から20世紀初頭にかけて8基建造されましたが、現在も稼働しているのは世界遺産に登録されたこの4基のみです。2002年には、高低差73mを誇る世界最大級のストレピ＝ティウ船舶昇降機が完成し、商業目的の運搬はそちらに移行したため、世界遺産登録の4基は、現在では主に観光目的で限定的に稼働しています。

運河の建設にあたっては、沿岸の緑化も重視されました。1911年の建設当時、アメリカニレ、アメリカトネリコ、オーク、ポプラ、カエデ、シカモア、セイヨウニワトコといった様々な樹種が植えられ、ヤナギ、シラカンバ、ニセアカシアなども見られました。リフト周辺には、ヨーロッパクロマツ、ニセアカシア、カエデ、セイヨウハシバミ、セイヨウニワトコ、ポプラなどが多く植えられ、現在ではセイヨウシナノキ、カエデ、ヨーロッパグリ、セイヨウトネリコなどが多く見られます。豊かな自然と歴史的建造物が調和した景観は、この世界遺産の魅力を高めています。

なお、世界遺産登録には、4基のリフトだけでなく、周辺の設備や橋なども含まれています。登録基準としては、以下の2点が挙げられます。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。

これらの基準を満たすこのサントル運河のボートリフトは、技術史、そして産業遺産としての価値を高く評価されており、未来への貴重な遺産として受け継がれています。その独特の技術と美しい景観は、訪れる人々に忘れられない感動を与えてくれるでしょう。

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