セイヨウシナノキ

セイヨウシナノキ

セイヨウシナノキ（学名: Tilia × vulgaris）は、シナノキ科シナノキ属の落葉樹です。リンデンバウム、リンデとも呼ばれ、フユボダイジュとナツボダイジュの自然交配種です。ヨーロッパで広く植えられ、様々な用途で利用されてきました。

特徴

樹高と樹齢: 樹高は40メートルを超えることもあり、樹齢も1000年を超えるものがあります。老木になると幹は太く、樹皮はゴツゴツになります。
葉と花: 枝はよく分枝し、ハート形の葉を茂らせます。花は薄黄色で、甘い芳香があります。
利用: 木材は楽器や木彫材に、樹皮は繊維として利用されます。北米ではロープや莚の原料となります。花はハーブとして利用され、リラックス効果のあるハーブティーの原料となります。また、蜜源植物としても珍重され、濃厚な味わいの蜂蜜が採れます。

文化的な意味合い

ヨーロッパでは、セイヨウシナノキは郷愁を誘うロマンチックな木として親しまれています。ドイツでは、村の中心にあるセイヨウシナノキは集いの場であり、コミュニティーの精神的な象徴でした。中世ヨーロッパでは自由の象徴とされ、裁判の判決が木の下で言い渡されることもありました。

ベルリンのウンター・デン・リンデン通りには、街路樹としてセイヨウシナノキが植えられています。シューベルトの歌曲『菩提樹』や、フランクフルト日本人国際学校の校歌にも登場するなど、文化的な影響も与えています。

ドイツの恋愛詩にもよく登場し、騎士と乙女の逢引の場所として描かれることもありました。ゲルマン神話の愛と春と豊穣の女神フレイアと関連付けられることもあります。

注意点

セイヨウシナノキにはアブラムシがつきやすく、甘い液体を排泄します。この液体が車に付着すると、汚れが付着してベタベタになることがあります。

その他

植物学者カール・フォン・リンネの姓はシナノキに由来すると言われていますが、日本のシナノキとは異なる種類です。

セイヨウシナノキは、ヨーロッパの文化や歴史に深く根ざした、美しい樹木です。

参考文献

ジョナサン・ドローリ 著、三枝小夜子 訳『世界の樹木をめぐる80の物語』柏書房、2019年12月1日。ISBN 978-4-7601-5190-5。

関連項目

シナノキ - 日本特産種
ボダイジュ - 同属で、中国原産の植物。釈迦が悟りを開いたとされる木（インドボダイジュ Ficus religiosa）の代用として用いられた。

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