ラージャスターンの丘陵城塞群

ラージャスターンの丘陵城塞群

ラージャスターンの丘陵城塞群は、インドのラージャスターン州に位置する6つの城塞から成り、UNESCOの世界遺産に登録されています。この遺産は、8世紀から18世紀のラージプート王国の繁栄を物語るものであり、独特の建築様式と文化的伝統に対する評価が高いです。これらの城塞は、単に防衛のための建築物ではなく、政治、文化、学問が交わる重要な拠点でもありました。

構成資産

城塞群に含まれる6つの城塞は、それぞれ異なる歴史的背景や地理的特徴を持っています。以下に、それぞれの城塞について詳しく説明します。

チットールガル城

チットールガル城は、メーワール王国の旧都であり、歴史的な訴えが強い場所です。城内には、15世紀に改築された宮殿跡やヒンドゥー寺院、ジャイナ寺院が多く残っており、特に美しい「勝利の塔」や「名誉の塔」と括られる塔は、建築的な価値が高いです。この城は何度も攻撃を受け、特に14世紀から16世紀にかけてのイスラーム勢力による攻囲戦では多くの人命が失われました。登録面積は305 ha、緩衝地域は440 haに及びます。

クンバルガル城

クンバルガル城は、その巨大な城壁で知られており、インドでは最も長いもので、全長は約20 kmです。1443年から1458年にかけて建立されたこの城塞は、神聖なヒンドゥー寺院や重要な城門があり、多様な宗教の共存の形を示しています。登録面積は268 ha、緩衝地域は1,339 haです。

ランタンボール城

10世紀に築かれたランタンボール城は、独特な山城であり、現在は国立公園内に位置してトラが生息するエリアの中に佇んでいます。この城は自然の地形を活用した設計で、他の城塞とは異なる特徴を持つことから、登録されました。登録面積は102 ha、緩衝地域は372 haです。

ガグロン城

ガグロン城は川の合流点に位置し、防衛のために水を利用した独特の設計が評価されています。12世紀の建築様式が見られ、現在も一部住民が生活している珍しい城塞です。登録面積は23 ha、緩衝地域は722 haです。

アンベール城

アンベール城は、16世紀に建設が始まり、後にムガルの影響を受けた美しい建物です。「鏡の間」や華麗な門は特に訪れる人々を魅了します。この城は「ラージプート＝ムガル宮廷様式」を代表する建築物とされ、登録面積は30 ha、緩衝地域は498 haです。

ジャイサルメール城

ジャイサルメール城は、その黄色い砂岩の建築が特徴で、約3000人の住人が今でも生活を送っています。この城塞はタール砂漠の交易路の重要な要衝でしたが、経済的衰退によって古い姿が残されています。登録面積は8 ha、緩衝地域は89 haです。

登録の経緯

この遺産の世界遺産登録は、2010年に暫定リストに記載された後、2011年に正式に推薦されましたが、最初の評価は「不登録」という結果でした。その後、再推薦を経て、2013年にはICOMOSから登録勧告を受け、翌年の第37回世界遺産委員会で正式に登録される運びとなりました。最終的には、地域の文化的遺産を保護するために、この城塞群が認められたのです。

まとめ

ラージャスターンの丘陵城塞群は、インドの歴史的価値を持つ重要な文化財であり、観光地としても多くの人々に親しまれています。城市の中心としてまた、文化的な象徴としての役割を果たしたこれらの城塞は、ラージプート文化やその洗練された建築技術を今に伝えています。

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