リアル・ラヴ (ビートルズの曲)

ジョン・レノンの遺作「リアル・ラヴ」：ビートルズ再集結と多様なカバーの歴史

ジョン・レノンが残した未発表曲「リアル・ラヴ (Real Love)」は、複雑で興味深い歴史を持つ楽曲です。1970年代にレノンが制作したデモテープは、1996年にビートルズのアンソロジー企画の一環として、残されたメンバー3人によって完成され、新たな命を吹き込まれました。この記事では、その制作過程、チャート成績、そして数々のアーティストによるカバーについて解説します。

制作の軌跡：デモからビートルズ・バージョンへ

「リアル・ラヴ」の起源は「Girls and Boys」という楽曲に遡ります。1977年にはじめてデモが制作され、「Real Life」と題名を変えながら、1979年と1980年にかけて計6種類のデモが録音されました。これらのデモには、アコースティックギターの弾き語りバージョンや、歌詞の異なるバージョンなどが含まれていました。歌詞は制作過程で変更され、最終的には「no need to be alone / it's real love / yes, it's real love」のようなフレーズが「Why must it be alone / it's real / well it's real life」のように変化しています。

レノンは、1980年のアルバム『ダブル・ファンタジー』への収録を検討しており、実際、手書きのトラックリストにも記載されていました。しかし、本格的なレコーディングは行われず、デモ音源は1988年の『イマジン (オリジナル・サウンドトラック)』で初めて世に出ることとなりました。その後も、いくつかのコンピレーションアルバムに収録され、さまざまなバージョンの「リアル・ラヴ」が公開されました。

1994年、ビートルズのアンソロジー企画が始動。ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの3人は、レノンの未発表曲をレコーディングすることを決定します。オノ・ヨーコから提供されたデモテープの中から選ばれた「リアル・ラヴ」は、サセックスにあるマッカートニーの自宅スタジオで、最新の技術を用いて現代風にアレンジされました。

ビートルズ・バージョンでは、まずコンピュータでノイズを除去し、レノンのボーカルにマッカートニーのボーカルをオーバーダビング。その後、ベース、ギター、ドラム、さらにはハープシコードやハーモニウムといった楽器が追加され、レノンのデモとは全く異なる豊かなサウンドが完成しました。この過程で、テープの速度調整により、キーが半音上げられたことも特徴的です。

参加ミュージシャン

デモ音源

ジョン・レノン：リード・ボーカル、アコースティック・ギター

ビートルズ・バージョン

ジョン・レノン：ダブルトラックのリード・ボーカル、ピアノ
ポール・マッカートニー：バッキング・ボーカル、アコースティックギター、ピアノ、ベース、コントラバス、ハーモニウム、ハープシコード、パーカッション
ジョージ・ハリスン：バッキング・ボーカル、エレクトリックギター、アコースティックギター、パーカッション
リンゴ・スター：バッキング・ボーカル、ドラム、パーカッション
ジェフ・リン：バッキング・ボーカル、ギター

カバーとチャート

「リアル・ラヴ」は、ビートルズ版のシングルリリース後も、多くのアーティストによってカバーされました。

中でも注目すべきは、トム・オデールによるカバーです。2014年、イギリスの百貨店チェーンジョン・ルイスのクリスマスCMソングとして使用され、大ヒットを記録しました。このカバーは全英シングルチャートで最高位7位を記録するなど、大きな成功を収めました。

その他、レジーナ・スペクター、アダム・サンドラー、シャキー・グレイブスなど、さまざまなアーティストが「リアル・ラヴ」を独自の解釈でカバーし、楽曲の魅力を改めて世に示しています。

まとめ

「リアル・ラヴ」は、レノンの素朴なデモから、ビートルズによる華麗なアレンジを経て、多くのアーティストによってカバーされ続ける、まさに不朽の名曲といえるでしょう。その歴史は、レノンの才能、そしてビートルズのレガシーの深さを改めて示すものとなっています。 楽曲の変遷と、時代を超えた魅力を今後も追いかけていきたいものです。

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