リオ・サン・フアン・デ・ニカラグアの戦い

リオ・サン・フアン・デ・ニカラグアの戦い：七年戦争下のニカラグアを巡る攻防

リオ・サン・フアン・デ・ニカラグアの戦いは、七年戦争中の1762年7月から8月にかけて、イギリスがニカラグアのグラナダを占領しようとした戦いです。当時ジャマイカ総督であったウィリアム・リトルトンが遠征を指揮しました。

背景：イギリスのニカラグアへの執着

イギリスは18世紀を通じてニカラグアを度々攻撃していました。その理由は、中央アメリカの植民地化をミスキート海岸の南に拡大すること、そしてニカラグアが太平洋と大西洋を結ぶ重要なルートに位置していたからです。1740年には、イギリスとミスキート族の間で友好同盟条約が締結され、ミスキート海岸はイギリスの保護国となり、イギリスはミスキート族に武器を供与しました。その後、ミスキート族はアメリカ独立戦争でイギリスに味方し、スペイン植民地を攻撃して勝利を重ねました。

1756年に七年戦争が勃発すると、スペインは中立を宣言しましたが、イギリスの私掠船がスペインの港でフランス船を拿捕した事件をきっかけに、イギリスとスペインの関係は悪化しました。スペインはフランスとの同盟を強化し、イギリスとの戦争に備えました。スペインの目的は、イギリス領のジブラルタルとジャマイカの占領にありました。

イギリスは1762年1月にスペインに宣戦布告し、すぐさまキューバとフィリピンを占領しました。ジャマイカ総督のリトルトンは、ニカラグア遠征を計画し、サン・フアン川を遡ってニカラグア湖に到達し、グラナダを占領することで、スペイン領アメリカの南北を分断し、太平洋への出口を確保しようとしました。その最大の障害は、処女降誕要塞でした。

戦闘：ラファエラ・エレーラの奮闘

イギリスとミスキート族の遠征軍は、1762年7月にサン・フアン川を遡り、処女降誕要塞に到着しました。遠征軍は2,000人以上の兵士と50隻以上の船を擁していましたが、要塞の守備兵は100人程度でした。しかも、指揮官のフアン・デ・エレーラ・イ・ソウトマイヨールは重病に罹っていました。彼の娘である19歳のラファエラ・エレーラは、父に代わって要塞を守ることを誓いました。指揮官のエレーラが亡くなると、ドン・フアン・デ・アギーラ・イ・サンタクルーズが臨時の指揮官に就任しました。

イギリス遠征軍は要塞に降伏を要求しましたが、ラファエラは徹底抗戦を主張し、要塞のゲートを封鎖しました。武器の訓練を受けていたラファエラは、油断した遠征軍に砲撃を加え、イギリス士官を射殺しました。イギリス軍は激怒し、要塞を猛攻しましたが、ラファエラの勇敢さに鼓舞された守備兵は激しく抵抗し、遠征軍に大損害を与えました。ラファエラは、アルコールに浸したシーツを川に流し、火をつけて敵船を攻撃しました。この奇策により、遠征軍は攻撃を中止せざるを得ませんでした。

アギーラもラファエラの気概に元気づけられ、その後6日間の包囲戦を耐え抜きました。ラファエラは砲手として働き、遠征軍が撤退するまで要塞を守り抜きました。遠征軍はサン・フアン川の河口まで撤退し、カリブ海への航路を妨害しました。

その後：和平と再度の遠征

要塞のスペイン守備軍にとって幸運なことに、スペインとイギリスは和平交渉を開始し、1763年のパリ条約で合意に至りました。イギリスは占領したキューバとマニラを返還し、スペインはフロリダを割譲しました。

1779年にスペインがアメリカ独立戦争に参戦すると、イギリスは再びニカラグアへの遠征を計画しました。1780年、ジョン・ポルソンとホレーショ・ネルソンが要塞を攻撃し、スペイン守備軍を降伏させました。ネルソンは要塞を占領しましたが、病気により撤退を余儀なくされました。

関連項目

アメリカ独立戦争におけるスペイン
七年戦争下のイギリス

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