ノルウェーのリクスモール協会:伝統と変革の軌跡
1907年4月7日、文豪
ビョルンスティエルネ・ビョルンソンらによって設立されたリクスモール協会(Riksmålsforbundet)は、
ノルウェーの言語政策において重要な役割を果たしてきた団体です。本稿では、同協会の歴史、主張、活動、そして
ノルウェー語標準語形成における影響について考察します。
リクスモールとノルウェーの言語政策
ノルウェー語には、
ブークモールと
ニーノシュクという二つの主要な書記言語があります。リクスモール協会は、伝統的なリクスモール(
ブークモールの古い表記法)の擁護を掲げ、活動しています。20世紀前半、
ノルウェー政府は、
ブークモールと
ニーノシュクを統合し、新しい標準語「サムノシュク」を制定しようと試みました。しかし、リクスモール協会は、この政策に強く反対しました。協会は、サムノシュク政策が伝統的なリクスモールを損なうだけでなく、言語の多様性を阻害すると主張したのです。
協会の主張と活動
リクスモール協会は、単に伝統的な表記法の維持を主張するだけでなく、
ノルウェー語の豊かな表現力を守るための積極的な活動を行ってきました。具体的には、会誌『Ordet』(言葉の意)の発刊を通じて、リクスモールを用いた質の高い文章の普及に努め、会員向けの教育活動なども行っています。また、政府や教育機関に対して、リクスモールを尊重する言語政策の推進を訴え続けてきました。
近年の状況と展望
近年、
ノルウェー政府はサムノシュク政策を正式に廃止し、リクスモール的な語形を容認する方向へと舵を切りました。
1981年と
2005年の正書法改定は、協会にとって大きな成果と言えるでしょう。しかし、それでもリクスモール協会は、
ノルウェー語の多様性と伝統を維持するため、活動を継続しています。言語政策の動向を注視しつつ、会員と共に、より良い言語環境の創造を目指して活動を続けているのです。
歴代会長
リクスモール協会の歴代会長は、
ノルウェーの文化・言語界において重要な役割を果たしてきた人物ばかりです。彼らのリーダーシップの下、協会は数々の困難を乗り越え、現在に至っています。以下に、歴代会長を列挙します。
1907–1910
ビョルンスティエルネ・ビョルンソン
1910–1911 Ragna Nielsen
1911–1916 Alfred Eriksen
1916–1918 I. M. Platou
1918–1919 Jens Jørgen Mørland
1919–1929 Gerhard Holm
1929–1936 Ragnar Ullmann
1936–1937 Alf Harbitz
1939–1945 Harald Bakke
1945–1947 Jonas Hestnes
1947–1956 Arnulf Øverland
1956–1959 Sigurd Hoel
1959–1961 Ernst Sørensen
1961–1969 Johan Bernhard Hjort
1969–1974 Aksel Lydersen
1974–1983 Knut Wigert
1983–1988 Jan Willoch
1988–1990 Erling Granholt
* 1990– Trond Vernegg
まとめ
リクスモール協会は、
ノルウェーの言語政策に大きな影響を与えてきた団体です。伝統的なリクスモールの擁護を旗印に、現代に至るまで活動を続けています。その歴史と活動は、
ノルウェー語の多様性と発展を考える上で、欠かせないものと言えるでしょう。今後も、同協会の活動に注目していく必要があります。
参考文献
Langslet, Lars Roar (1999): I kamp for norsk kultur : riksmålsbevegelsens historie gjennom 100 år Oslo : Riksmålsforbundet
外部リンク
リクスモール協会ホームページ