リコイルスターター

リコイルスターター：手軽なエンジンの始動装置

リコイルスターターは、内燃機関を手動で始動させるための装置です。ロープやコードを手で引くことでクランクシャフトを回転させ、エンジンが始動する仕組みです。シンプルな構造ながら、小型エンジンや特殊な用途では現在も広く利用されています。英語ではRecoil starter、Manual starter、Pull starterなどと呼ばれます。

動作原理

最も基本的なリコイルスターターは、クランクシャフトまたはフライホイールに直接取り付けられたプーリーにロープを巻き付け、ロープを引くことでクランクシャフトを回転させる仕組みです。ロープはプーリーに固定されていないため、始動後にはロープを手で巻き戻す必要があります。このタイプのリコイルスターターは、簡素で故障が少ないため、競艇用ボートのエンジンなど、信頼性が重視される用途で現在も使用されています。

一方、一般的に普及しているリコイルスターターは、プーリーとクランクシャフトの間にワンウェイクラッチが組み込まれています。ワンウェイクラッチは、プーリーからクランクシャフトへは回転を伝える一方、逆方向の回転は遮断します。これにより、エンジンが始動した後、クランクシャフトの回転がロープに伝わるのを防ぎ、ロープが巻き込まれる危険性を排除しています。さらに、多くの場合、ばねなどの機構によってロープが自動的に巻き戻されるため、繰り返し容易に始動操作を行うことができます。

リコイルスターターの種類と用途

リコイルスターターは、その構造や用途によっていくつかの種類に分類できます。

シンプルなロープ式： 最も基本的なタイプで、ロープを直接プーリーに巻き付けます。構造が単純で信頼性が高いため、特殊な用途で使用されます。
スプリングリターン式： ロープの巻き戻しを自動化する機構が組み込まれたタイプです。始動操作が容易で、一般的に広く使用されています。
小型エンジン向け： 芝刈り機、チェーンソー、発電機など、小型エンジンの始動によく用いられます。
特殊用途向け： 競艇用ボートのエンジン、一部の航空機エンジンなど、特殊な用途で使用されるものもあります。

リコイルスターターと他の始動方法

リコイルスターターは、セルモーターやキックスターターといった他の始動方法と比較して、構造がシンプルで軽量、かつ低コストであるという利点があります。しかし、セルモーターに比べて始動に要する力は大きく、また、頻繁な使用には適していません。そのため、セルモーターが主流となった現在でも、小型エンジンや特殊な用途では、その簡素さと信頼性からリコイルスターターが依然として利用されています。

現代におけるリコイルスターター

現代においては、セルモーターが主流となり、リコイルスターターは小型エンジンや特殊な用途に限定されています。しかし、ホンダ・CTX200 Bushlanderのように、現在も製造されているオートバイでリコイルスターターが装備されている例もあります。これは、セルモーターが故障した場合でもエンジン始動を可能にするためのバックアップ機構として機能していると考えられます。

まとめ

リコイルスターターは、簡素な構造でありながら、その信頼性から現在でも小型エンジンや特殊な用途で活用されている重要な始動装置です。その歴史と技術的な特徴を理解することで、内燃機関の始動機構についてより深く知ることができます。

もう一度検索