リコ・コンスタンティノ

リコ・コンスタンティノ。その名は、アメリカン・プロレス史に、一筋の異彩を放つ存在として刻まれている。1961年ネバダ州ラスベガス生まれ。レスラーとしてのキャリアを歩む以前から、リコの人生はドラマチックな出来事の連続だった。

若き日はSWAT隊員として社会の安全に貢献、ボディーガードやバウンティハンターとして危険な仕事もこなした。その後はスタントマンに転身し、ハリウッド大作『バットマン』にも携わった経験を持つ。さらに、アメリカのTV番組『American Gladiators』にも出演し、1990年から1991年にかけてシーズン王者に輝いたという華々しい実績も持つ、まさにマルチな才能の持ち主だった。

しかし、これらの多彩なキャリアは、リコの運命をプロレスへと導く序章に過ぎなかった。1998年、南カリフォルニアのインディー団体EWFでプロレスラーとしてデビュー。その卓越した才能はすぐにWWF（後のWWE）のスカウトの目に留まり、WWEと契約を果たす。

38歳という、プロレスラーとしては遅咲きのデビューながら、WWEの下部組織OVWを経て、晴れてWWEのリングに上がる。そこでリコは、オカマのスタイリストという、当時としては非常に斬新なギミック（キャラクター設定）で登場。ビリー＆チャック、スリー・ミニッツ・ウォーニングといった人気チームのマネージャーを務め、その強烈な個性で観客を魅了した。このギミックは、ゲイギミックの先駆者であるエイドリアン・ストリートを参考に、実際にストリート本人と対談を重ねて完成させたというエピソードも残されている。

その後は、ミス・ジャッキー、チャーリー・ハースらとタッグを組み、数々のタイトルを獲得。WWE世界タッグ王座、WWEタッグ王座と輝かしい戦績を残した。しかし、2004年11月7日、WWEを解雇される。

WWE解雇後も、リコの闘いは続いた。全日本プロレスへ参戦し、RO＆Dに所属。ブキャナンとタッグを組み、アジアタッグ王座を奪取する快挙を達成した。しかし、2005年5月、新たな人生の転換点を迎え、警察官になるためプロレスラーとしてのキャリアに終止符を打つ。アジアタッグ王座は返上された。年齢制限により警察官への道は閉ざされたものの、警察学校に再入学。卒業後はネバダ州のタクシー専門の警官として、再び社会貢献の道を歩み始めた。

2012年11月17日、Future Stars of Wrestling (FSW)のラスベガス大会で一夜限りの復帰を果たすが、この試合をもって、2度目の引退を宣言。

リコ・コンスタンティノのトレードマークともなったもみあげは、WWE来日公演で「もみあげコール」が起こるほどの人気ぶりで、ヒール（悪役）であるにも関わらず、日本ではベビーフェイス（正義のヒーロー）的な人気を博した。

リコ・コンスタンティノ。その人生は、プロレスラーとしての輝かしい戦績だけにとどまらない。SWAT隊員からスタントマン、そして警察官という、実に多様なキャリアと、リング上で見せた強烈なキャラクター性、そして忘れられないもみあげ。すべてが、リコ・コンスタンティノという唯一無二の存在を形作っている。彼の名は、プロレス史に、そして多くのファンの記憶に、いつまでも刻まれ続けるだろう。

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