リコーエレメックス

リコーエレメックス株式会社：精密機器製造の歴史と多角的な事業展開

リコーエレメックス株式会社は、愛知県岡崎市に本社を置く、リコー三愛グループの企業です。その事業は精密機器の製造を中心に多岐にわたります。

時計製造から始まった歴史

リコーエレメックスのルーツは、1899年設立の掛時計製造会社「高野時計製造所」と、1913年設立の置時計製造会社「高野金属品製作所」に遡ります。1921年に両社が合併し、「高野時計金属品製作所」として新たなスタートを切りました。戦前から砲弾用信管を手掛けていましたが、朝鮮戦争勃発後、アメリカ軍向けの特需で経営を立て直しました。その後、1956年に腕時計の生産を計画し、新たな分野への進出を試みました。

腕時計事業の展開

1957年初頭から、高野精密工業として腕時計の生産を具体化しました。当初は西ドイツのラコー時計のムーブメントを輸入し、ケースを組み合わせていましたが、徐々に自社製のムーブメントへと移行しました。また、婦人用腕時計の製造においては、アメリカの高級時計メーカーであるハミルトンと技術提携を結び、技術力を高めました。同年9月には「TAKANO」ブランドの「200シリーズ」を発売し、腕時計市場に参入しました。

1959年10月には、世界一薄型の手巻き時計「タカノ シャトー」を発表し、その技術力で注目を集めました。しかし、その直後の伊勢湾台風により、本社と工場が甚大な被害を受け、経営が悪化。1962年にはリコーの傘下に入り、「タカノ」ブランドは消滅し、リコーブランドとして再出発しました。

リコーブランドでは、当初はタカノのデザインを踏襲した製品を販売していましたが、その後、クォーツ時計の開発に注力し、「リクォーツ」シリーズをヒットさせました。以降は、斬新なデザインのクォーツ腕時計が主力商品となりました。2014年時点では、「SHREWD」をはじめとする複数のシリーズを展開していましたが、2021年頃に腕時計事業から撤退しました。

多角的な事業展開

リコーエレメックスは、腕時計事業以外にも、複写機周辺機器（ドキュメントフィーダー、フィニッシャーなど）、LPガス関連機器（プロパンガス用警報機「リコピット」）、精密機器・部品（砲弾用信管、自動車部品など）、健康機器（頭皮洗浄器、口腔洗浄器）など、幅広い分野で事業を展開していました。

その他の事業

かつてリコーがファミリーコンピュータ用半導体を製造していた関係で、ゲームソフトの販売も手掛けていました。1987年には、プロレスラーの長州力とコラボレートしたシューティングゲーム「新人類」を発売しました。

沿革

1938年：高野精密工業株式会社設立
1962年：リコー時計株式会社に商号変更
1986年：リコーエレメックス株式会社に商号変更
2008年：リコーの完全子会社となる
* 2021年：腕時計事業から撤退

リコーエレメックスは、時計製造から始まり、時代の変化に対応しながら多角的な事業展開を行ってきた企業です。その歴史は、日本の精密機器産業の発展とともに歩んできたと言えるでしょう。

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