リシ・カプール

リシ・カプール（Rishi Kapoor、1952年9月4日 - 2020年4月30日）は、インドのヒンディー語映画界で俳優、監督、プロデューサーとして活躍した人物です。半世紀にも及ぶキャリアの中で、彼は国家映画賞やフィルムフェア賞をはじめとする数多くの映画賞に輝き、その功績は広く認められています。

インド映画界において特別な地位を占めるカプール家の一員として生まれたリシ・カプールは、その血筋にふさわしく幼い頃から映画の世界に触れました。父である名匠ラージ・カプールの監督作『私はピエロ』では、主人公の青年期を演じ、その瑞々しい演技で国家映画賞の子役賞を受賞し、俳優としての才能の片鱗を見せます。

成人してからは、特に恋愛映画の分野でその魅力を発揮しました。1973年の主演デビュー作『ボビー』は、公開された年の興行収入で首位を記録する大ヒットとなり、彼自身もフィルムフェア賞の主演男優賞を獲得し、一躍スターダムに駆け上がります。この作品が、当時父が抱えていた借金返済のために製作されたという裏話は、彼の自伝でも語られています。彼は1970年代から1990年代にかけて、『Khel Khel Mein』、『Amar Akbar Anthony』、『Karz』、『Prem Rog』、『Saagar』といったヒット作で次々と主演を務め、青春スターとしての地位を確固たるものとしました。

共演者であったニートゥー・シンとは、多くの作品を通じて絆を深め、1980年に結ばれています。監督としては、1999年に手掛けた『Aa Ab Laut Chalen』が唯一の作品となりました。

2000年代に入ると、リシ・カプールはこれまでのロマンチックなヒーロー像から脱却し、性格俳優として新たな境地を開きます。助演という立場で、『Hum Tum』や『Love Aaj Kal』などに出演し、役柄の幅を広げました。特に2010年代以降は、『火の道』や『Aurangzeb』での悪役、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』での同性愛者、『D-Day』でのマフィアなど、それまでのイメージを打ち破る多様な役に積極的に挑戦し、俳優としての深みを見せました。家族との共演も多く、妻ニートゥー・シンとは『Do Dooni Chaar』でフィルムフェア賞審査員選出男優賞を受賞し、息子ランビール・カプールを含めた家族3人で『Besharam』に出演したこともあります。2016年には『カプール家の家族写真』でフィルムフェア賞助演男優賞を受賞するなど、助演としても高い評価を得ました。晩年には、『Mulk』でのムスリム役や『102 Not Out』での老いた親子役など、批評家から絶賛される演技を見せました。

リシ・カプールの人生は、残念ながら病によって幕を閉じます。2018年に白血病を患っていることが判明し、ニューヨークでの治療を経て2019年に帰国しましたが、2020年4月30日に病の再発により帰らぬ人となりました。彼が死去した時、ジューヒー・チャーウラーとの共演作『Sharmaji Namkeen』は撮影途中でしたが、後にパレーシュ・ラーワルが代役を務め完成に至りました。

私生活では、1980年にニートゥー・シンと結婚し、息子ランビール・カプールと娘リディマー・カプールをもうけました。2017年には自身の半生を綴った自伝『Khullam Khulla: Rishi Kapoor Uncensored』を出版しています。また、彼は公の場で政治や社会問題について率直な意見を述べることが多く、物議を醸すこともありましたが、その飾らない人柄の一面でもありました。

50年にわたりインド映画界に貢献し、数々の名演を残したリシ・カプールの功績は、今後も長く語り継がれることでしょう。2008年には長年の貢献を称えられ、フィルムフェア賞の生涯功労賞を授与されています。

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