リジェ・JS25

リジェ・JS25：1985年シーズンの活躍と悲劇

1985年のF1世界選手権で、リジェチームが使用したフォーミュラ1マシン、リジェ・JS25。ミッシェル・ポイジョンとクロード・ギャロパンという強力なデザイナー陣によって生み出されたこのマシンは、前年モデルのJS23をベースに、いくつかの重要な変更が加えられました。

まず、タイヤサプライヤーがミシュランからピレリへと変更されました。そして、心臓部となるエンジンは、ルノー製のV6ターボエンジンが引き続き搭載されました。さらに、ルノー・ワークスからベテランエンジニアのミッシェル・テツがリジェチームに復帰し、JS25の開発に貢献しました。テツの経験と技術が、マシンの性能向上に大きく寄与したことは想像に難くありません。

ドライバーラインナップは、ベテランのジャック・ラフィットと、当時F1参戦4年目を迎えていたアンドレア・デ・チェザリスという組み合わせでした。しかし、デ・チェザリスはオーストリアグランプリで大きなアクシデントに見舞われます。14周目、高速コーナーでコースアウト。JS25は制御不能となり、激しくコース脇の土手に衝突、大破しました。このクラッシュの後遺症は大きく、チームオーナーのギ・リジェは、修理費用などの経済的負担を考慮し、デ・チェザリスとの契約を打ち切ります。

デ・チェザリスの後任として、第11戦オランダグランプリ以降は、ルノーの期待の若手、フィリップ・ストレイフが起用されました。ストレイフは、ルノーエンジンを供給するチームのドライバーとして、その実力を証明する機会を得ることになります。

シーズンを通して、リジェチームは23ポイントを獲得し、コンストラクターズランキングで6位という結果を残しました。ラフィットは2度の3位入賞に加え、最終戦オーストラリアグランプリでは見事2位を獲得。一方、ストレイフも最終戦で3位表彰台を獲得し、リジェ・JS25はダブル表彰台という輝かしい結果でシーズンを終えました。特に最終戦では、ストレイフがラフィットを猛追。レース終盤には両者接触というハプニングもありましたが、何とか両者とも完走を果たしました。ストレイフの左前ホイールは外れかけるという危険な状況だったと伝えられています。

また、リジェチームは、南アフリカのアパルトヘイト政策に反対し、南アフリカグランプリをボイコットするという、倫理的な立場を明確に示しました。

リジェ・JS25は、速さと信頼性、そして時にドラマチックな展開を見せたマシンでした。高いポテンシャルを持ちながらも、デ・チェザリスの事故やチームの戦略など、様々な要因が絡み合い、結果的にはチャンピオン争いには絡むことができませんでしたが、F1の歴史に名を残す一台であると言えるでしょう。その活躍と、幾多の困難を乗り越えようとしたリジェチームの努力は、多くのF1ファンに記憶されていることでしょう。

もう一度検索