リスター・ストーム

Lister Storm：英国が生んだ猛獣

Lister Stormは、1990年代後半のGTレースシーンにおいて、その名を轟かせたレーシングカーです。イギリスのLister Cars Ltd.によって開発・製造されたこのマシンは、ジャガーXJR-9譲りの7.0リッターV型12気筒エンジンを搭載し、圧倒的なパワーを誇りました。最高速度は322km/hを超え、0から約97km/h（60mph）までわずか4.1秒で加速するその性能は、当時のレーシングカーの中でもトップクラスでした。

その心臓部である7.0リッターV型12気筒エンジンは、ジャガーのレーシングカー、XJR-9から受け継がれたものです。この強力なエンジンをフロントに搭載することで、優れたトラクションと加速性能を実現しました。ボディスタイルは2+2シーターで、最大4名乗車が可能な設計となっています。これは、ホモロゲーション取得のために必要とされたロードカー仕様によるもので、実際4台のロードカーが製造されました。そのうち3台は現在も現存しており、コレクターアイテムとして高い価値を持つとされています。

しかし、Lister Stormは単なる強力なエンジンを搭載したマシンではありませんでした。そのパフォーマンスを支えたのは、高度な空力設計と軽量な車体です。洗練されたボディワークは、高速走行時における安定性とダウンフォースの発生に大きく貢献しました。また、軽量化された車体構造は、優れたハンドリングと加速性能を実現する上で重要な役割を果たしました。

レース活動においては、1995年のル・マン24時間レースでデビューを果たしました。その後、デイトナ24時間レース、BPRグローバルGTシリーズ、FIA GT選手権など、世界中で開催される様々なレースに参戦。ル・マン24時間レースでは1995年から1997年にかけてLM-GT1クラスに参戦しましたが、強豪ひしめく中で目立った成績を残すには至りませんでした。しかし、イギリス国内のレースではその真価を発揮しました。特にイギリスGT選手権では、1999年と2001年にGT1クラスのタイトルを獲得するなど、長年にわたって活躍を続けました。

特筆すべきは、Lister Stormの名を冠した別のレーシングカー、Lister Storm LMPの存在です。しかし、このLMPマシンは、名前こそLister Stormを継承していますが、技術的な関連性は一切ありません。完全に独立した設計のLMP1マシンであり、Stormの血を受け継いだマシンというわけではありません。

Lister Stormは、その圧倒的な性能と、長年にわたるレース活動によって、多くのファンを魅了しました。ル・マンという世界最高峰の舞台に参戦した実績、そしてイギリス国内での数々の勝利は、このマシンが持つ潜在能力の高さを証明しています。現在では希少な存在となったロードカーは、往年の名車として高く評価されており、英国が生んだレーシングカーの伝説として語り継がれています。

もう一度検索