リストカット

リストカット、アムカ、レグカ、そしてフェイカ：自傷行為とその背景

リストカットは、刃物で手首を切る自傷行為として知られています。略称として「リスカ」も用いられます。同様の行為として、腕を切るアームカット（アムカ）、脚を切るレッグカット（レグカ）、顔を切るフェイスカット（フェイカ）などがあります。これらの行為は、1960年代のアメリカで流行し始め、その後世界的に広まりました。日本では「手首を切る」という行為から「リストカット」という名称が定着しました。

リストカットの背景にあるもの

リストカットは、言葉では表現できない強いストレスや苦痛を身体的に表現する方法の一つであると考えられています。ストレスを適切に処理できない場合、身体的な症状として現れることがあります。リストカットは、その一種と言えるでしょう。

歌を歌ったりスポーツをするといった健康的なストレス解消方法もありますが、犯罪や自傷行為といった非健康的な方法も存在します。リストカットは、後者の一例と言えるでしょう。

時に、他者の注意を引くための行為と誤解されることもありますが、実際には、ほとんどの人が一人でこっそりと自傷行為を行い、周囲に打ち明けずに苦しんでいるのが現状です。そのため、リストカットを行う人は、周囲の目につきにくい場所、例えば腕の内側や腹部などで行うこともあります。

リストカットの致死率は非常に低いものの、その背景には様々な要因が考えられます。調査によると、リストカットの主な理由は「不快感情への対処」であり、自殺願望によるものや、周囲への意思表示としての側面も持っています。特に、小学校高学年から中学生にかけての若年層においては、「自殺の意図」が強い傾向が見られます。

リストカットと脳内物質

自傷行為直後には、脳内で内因性オピオイドという物質の分泌が急増することがわかっています。このことから、リストカットを行うことで一時的に精神的な苦痛が軽減される効果があることが示唆されています。しかし、これは一時的なものであり、根本的な解決にはなりません。

治療と支援

リストカットを含む自傷行為への対応においては、まず冷静な対応が重要です。感情的に反応するのではなく、医学的な視点から傷の手当てを行い、その原因を冷静に分析する必要があります。

支援者にとって、重要なのは、リストカットを否定することなく、本人の気持ちを丁寧に受け止め、共感的に傾聴することです。リストカットに至った経緯や原因を一緒に探り、信頼関係を構築しながら、具体的な対処方法を模索することが求められます。

参考文献

松本俊彦、「自分を傷つけずにはいられない！」『児童青年精神医学とその近接領域』 57巻 3号 2016年 p.409-414, doi:10.20615/jscap.57.3_409, 日本児童青年精神医学会
もしも身近な人の自傷に気づいたら- yomiDr. / ヨミドクター（読売新聞）
自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント
内田伸子『発達心理学キーワード』有斐閣、2006年。ISBN 4-641-05882-2。

関連事項

自傷行為
境界性パーソナリティ障害
うつ病
精神科
* 心療内科

リストカットは深刻な問題ですが、適切な支援と治療によって回復することは可能です。悩んでいる方は、一人で抱え込まず、専門機関や信頼できる人に相談することをお勧めします。

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