リターダ

リターダ：大型車の安全運転を支える補助ブレーキ

大型トラックやバス、そしてラフテレーンクレーンといった車両には、安全な走行を確保するために様々なブレーキシステムが搭載されています。その中でも重要な役割を担うのが「リターダ」です。リターダは、エンジン[[ブレーキ]]や排気ブレーキでは得られない強力な制動力を発揮し、高速走行時の減速や、下り坂での速度制御に効果を発揮する補助ブレーキとして広く利用されています。

リターダの仕組みと種類

リターダは、大きく分けて「流体式」、「電磁式」、「永久磁石式」の3種類があります。それぞれの仕組みは以下の通りです。

1. 流体式リターダ

流体式リターダは、ステーター（シャーシ固定）とローター（推進軸と一体回転）の間に流体（エンジンオイル、ATF、水など）を満たし、ローターの回転によって生じる流体の抵抗を利用して制動力を得ます。多くの場合、水冷式冷却システムが用いられ、大きな制動力を発揮できます。ただし、重量が重く、後付けが難しいというデメリットもあります。世界的に最も普及しているタイプであり、大型の輸出用トラックやバスなどにも採用されています。ZF社のECOMATシリーズのように、トルクコンバータ式ATにリターダ機能を統合した製品もあります。鉄道車両の気動車にもコンバータブレーキとして用いられるケースがあります。

2. 電磁式リターダ

電磁式リターダは、電磁誘導の原理を利用して制動力を得ます。回転する電磁石（回転子）とシャーシに固定された金属板（固定子）の間に磁場を作り、回転子に発生する渦電流による抵抗を利用して減速します。空冷式が多く、後付けが容易で比較的軽量ですが、発熱による制動力の低下が早く、バッテリーやオルタネーターへの負担も大きくなります。また、非作動時でも走行抵抗が大きくなるという欠点も持っています。

3. 永久磁石式リターダ

永久磁石式リターダは、電磁式リターダの固定子を永久磁石に置き換えたものです。電磁石を使用しないため、小型軽量でコストパフォーマンスに優れています。吸収トルクは小さいものの、日本のトラックを中心に広く採用されており、いすゞ[[自動車]]と住友金属工業（現日本製鉄）による共同開発がその始まりです。現在では、他メーカーへの普及も進んでいます。

リターダのメリット

リターダは、フットブレーキの負担を軽減し、ブレーキシステム全体の寿命を延ばすことに大きく貢献します。具体的には、以下のメリットがあります。

ブレーキフェード現象の抑制: フットブレーキの使用頻度を減らすことで、ブレーキの過熱による制動力の低下（フェード現象）を防ぎます。
ベイパーロック現象の抑制: ブレーキ系統への熱によるブレーキフルードの沸騰（ベイパーロック現象）を抑制します。
ブレーキパッド・ライニングの摩耗軽減: フットブレーキへの負担が減るため、ブレーキパッドやライニングの摩耗を抑え、整備コストを低減できます。
ジャックナイフ現象の抑制: 牽引車とトレーラーの連結において、減速時に発生するジャックナイフ現象をABSと併用することで抑制する効果があります。
* 燃費向上: 特に、下り坂での速度制御において、エンジン[[ブレーキ]]だけでは不十分な状況でも、リターダを利用することでエンジン回転数を抑え、燃費を改善できます。

リターダの普及状況

かつてはコストや重量の増加がネックとなり、リターダの搭載率は低かったものの、近年は排出ガス規制の強化に伴うエンジン小型化や、LPG/CNG自動車の普及、大型クレーンの標準装備化などによって、リターダへの注目が高まっています。

主要メーカー

リターダは、フォイト（ドイツ）、ニッポンリターダシステム（エクセディとフォイトの合弁）、曙ブレーキ工業（流体式）、TBK（旧東京部品工業）、澤藤電機、テルマ（イギリス）（電磁式）、日本製鉄（永久磁石式）など、多くのメーカーが製造・供給しています。

まとめ

リターダは、大型車の安全運転に不可欠な補助ブレーキとして、その重要性を増しています。様々な種類と特徴を持つリターダは、これからも進化を続け、より安全で効率的な輸送を支えていくでしょう。

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