リチャード・アヴェドン

リチャード・アヴェドン：20世紀を代表する写真家の軌跡

リチャード・アヴェドン (1923年-2004年) は、アメリカを代表する写真家として知られています。ファッション写真からポートレート、ジャーナリズム写真まで、幅広い分野で活躍し、20世紀の写真史に大きな足跡を残しました。本稿では、彼の生涯と作品世界を探ります。

青年期とキャリアの始まり

ニューヨークでユダヤ系ロシア人の家庭に生まれたアヴェドンは、12歳から写真に親しみます。コロンビア大学で哲学と詩を学んだ後、軍務を経て除隊。その後、ファッション写真を志し、高級デパート「ボンウィット・テラー」の広告写真からキャリアをスタートさせます。自作のポートフォリオを携え、『ハーパース・バザー』編集者アレクセイ・ブロドヴィッチに作品を認められ、同誌でデビューを果たしました。ブロドヴィッチの下で写真の研鑽を積み、後に『ヴォーグ』や『ライフ』誌でも活躍するようになります。

パリでの躍進と「ニュールック」

1947年、アヴェドンは『ハーパース・バザー』誌の依頼でパリへ。当時話題を呼んでいたディオールの「ニュールック」を撮影しました。街並みを背景に、ダイナミックなモデルの動きを捉えた写真は、当時のアメリカ写真界で主流であったパンフォーカスとは異なる、被写界深度の浅い、ブレやボケを効果的に使った独自のスタイルでした。この斬新な作風は、批評家たちからも注目を集めました。パリコレクションでの活躍により、アヴェドンはファッション写真家としての地位を確固たるものにしました。また、ココ・シャネルのポートレートも撮影しています。

名だたるモデルたちとの仕事

1950年代には、ドヴィマ、スージー・パーカー、グロリア・ヴァンダービルト、オードリー・ヘプバーンなど、多くのトップモデルを撮影。アヴェドンの写真からインスピレーションを得て、ディオールが「Hライン」を発表したエピソードも有名です。この頃、アヴェドンは金髪モデルを使った撮影にも取り組み始め、パリの街を舞台にした幻想的なファッション写真を生み出しました。中でも、サーカスで象と共に撮影したドヴィマの写真「ドヴィマ・ウィズ・エレファンツ」は、彼の代表作として知られています。

映画「パリの恋人」との関わり

1956年公開の映画「パリの恋人」は、アヴェドンの私生活やパリ・コレクションでの撮影エピソードを元に制作された作品です。アヴェドン自身も、写真提供や演技指導など、製作に大きく関わりました。映画には、アヴェドンが撮影で起用したモデルたちも出演しています。

『ヴォーグ』移籍以降の活動

1966年に『ハーパース・バザー』を離れ、『ヴォーグ』に移籍。ファッション写真に加え、精神病院の患者、ベトナム戦争、ベルリンの壁崩壊など、社会的なテーマも扱うようになります。西部の人々を被写体とした大判プリント集はベストセラーとなり、高い評価を得ました。1970年代には、ジャンニ・ヴェルサーチの広告キャンペーンを手がけるなど、ファッション界との関わりを継続します。また、アメリカ西部の住人のポートレートを撮影する長期プロジェクトにも取り組みました。

後期と死去

1980年代以降も、『エゴイスト』や『ザ・ニューヨーカー』誌などで作品を発表。1995年に発表した「In Memory of Late Mr. and Mrs. Comfort」は、特異な表現で大きな話題を呼びました。2004年、脳内出血のため、撮影中に死去しました。

アヴェドンの写真が示すもの

アヴェドンの写真は、ファッション写真の枠を超えて、時代や社会、人間の様々な側面を映し出しています。彼の作品は、時代を超えて人々の心を捉え続け、現代においても高く評価されています。その独特の構図、モデルの表情、そして背景の組み合わせは、見る者に深い印象を与えます。 オークションでの作品の高額落札も、彼の作品が持つ高い芸術性と人気を示すものです。彼の撮影手法やライフスタイル、そして数々の賞なども含めて、リチャード・アヴェドンは、写真史における重要な人物と言えるでしょう。

もう一度検索