リチャード・サザランド

リチャード・ケレンス・サザランドの生涯

リチャード・ケレンス・サザランド（Richard Kerens Sutherland, 1893年11月27日 - 1966年6月25日）は、アメリカ陸軍の軍人であり、最終階級は中将です。彼は、ダグラス・マッカーサー元帥の参謀長として、その辣腕を振るったことで知られています。しかし、その後の不倫問題により、マッカーサーとの関係が悪化し、その後のキャリアに大きな影響を与えました。

生い立ちと初期の軍歴

1893年、メリーランド州で生まれたサザランドは、ウェスト[[バージニア州]]選出の上院議員を父に持ち、名門イェール大学を卒業しました。大学時代には予備役将校訓練課程を修了し、コネチカット州の州兵部隊に入隊しました。1916年、メキシコ国境地帯でのパンチョ・ビリャ討伐作戦に参加した際、陸軍少尉に任官され、野戦砲部隊を率いました。第一次世界大戦では、第2歩兵師団に所属し、西部戦線に派遣されるとともに、イギリスで戦車学校を受講しました。この時期に、後の第1歩兵師団所属のリチャード・マーシャルと知り合っています。

戦間期

第一次世界大戦終結後、サザランドはアメリカに帰国し、1920年にジョゼフィン・ホワイトサイドと結婚しました。陸軍歩兵学校の教官やシャタック・セント・メリーズ校での教鞭を経て、アメリカ陸軍指揮幕僚大学を卒業後、フランス陸軍士官学校に留学しました。帰国後は、陸軍省で作戦および訓練担当幕僚を務めるなど、エリートとしてのキャリアを重ねていきました。

1937年には天津の第15歩兵連隊司令官に着任し、その後、フィリピンにいたマッカーサーの軍事顧問団に加わります。マッカーサーは、当初中佐ではなかったサザランドをローカルランクながら中佐に任命し、その後正式に昇進させました。1939年末、参謀長のアイゼンハワーがマッカーサーと対立してフィリピンを離れたため、サザランドがその後任として軍事顧問部参謀長に就任しました。1941年、日米関係が悪化する中で、大佐に昇進しました。

第二次世界大戦

真珠湾攻撃時、サザランドはマッカーサーにその情報を伝え、フィリピンへの日本軍侵攻が確実となると、極東空軍司令官にB-17による台湾空襲を要請しましたが、度重なる命令の変更により、結果的に極東空軍の壊滅を招いてしまいます。

マッカーサーはマニラを無防備都市とした上で、アメリカ極東陸軍をバターン半島とコレヒドール島に分散させ、司令部もコレヒドール島のマリンタ・トンネルに移動させました。サザランドは少将に昇進し、バターン半島を頻繁に訪れて督戦し、またコモンウェルスのケソン大統領から現金報酬を受け取っていました。バターン半島で日本軍の攻勢を食い止めていましたが、最終的にはアメリカ軍はオーストラリアへの脱出を余儀なくされました。

1942年3月、ルーズベルト大統領の指示により、マッカーサーはオーストラリアへの脱出を決めます。サザランドは「バターン・ギャング」と呼ばれる脱出組を編成し、マッカーサーと共に魚雷艇でコレヒドール島を脱出しました。オーストラリアに到着後、マッカーサーは南西太平洋軍最高司令官となり、サザランドは引き続き参謀長を務めましたが、その役割は次第に「憎まれ役」としての側面を強めていきました。

南西太平洋軍

南西太平洋軍において、サザランドはマッカーサーの意向を忠実に実行し、周囲からはマッカーサーを過保護にしていると見られるようになりました。そのため、アメリカ軍やオーストラリア軍の下級将校からの不満が高まりました。また、航空作戦に関する知識不足を指摘される場面もありましたが、実際には民間パイロットの免許を取得しており、航空機の操縦を趣味としていました。しかし、年齢を理由に軍のパイロットとして認められることはありませんでした。

1943年には、マッカーサーの大統領選出馬を画策し、そのための根回しを行いましたが、最終的にはマッカーサー自身が戦争終結を優先したため、出馬は見送られました。サザランドは、統合参謀本部との会議にマッカーサーの代理として出席したり、マッカーサー宛ての通信を精査するなど、重要な役割を果たしました。南西太平洋軍の進撃路策定にも深く関わり、レイテ島攻略を決定するなど、作戦遂行において重要な役割を担いました。また、対日主要反攻路の策定でも、アメリカ海軍を翻弄しました。1944年、中将に昇進しました。

エレイン・クラークとの不倫関係

南西太平洋軍の司令部がメルボルンにあった頃、サザランドはエレイン・クラークという女性と不倫関係になりました。クラークはオーストラリア陸軍将校の妻であり、サザランドは彼女を司令部の受付係として雇い入れました。この関係は、周囲の噂やマッカーサーの耳にも入り、最終的にクラークは本国に送還されることになりました。この事件は、マッカーサーとサザランドの関係に大きな亀裂を生じさせることになりました。

戦後

1945年8月、日本が降伏し、第二次世界大戦は終結しました。サザランドは戦艦ミズーリでの降伏文書調印式に立ち会い、日本の全権団の署名をサポートしました。また、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）の参謀長を務めましたが、マッカーサーとの関係悪化に加え、健康状態も悪かったため、1945年12月に日本を離れ帰国しました。その後、退役し、公的な仕事に就くことはなく引退生活に入りました。

死去

サザランドは、1966年6月25日にワシントンD.C.のウォルター・リード陸軍医療センターで亡くなりました。72歳でした。アーリントン国立墓地に家族とともに埋葬されています。

人物

サザランドは、マッカーサーに忠実な人物として知られていますが、その一方で周囲からは恐れられ、毀誉褒貶の激しい人物でもありました。彼は、批判を気にせず、マッカーサーの命令を忠実に遂行しましたが、その独裁的な性格はマッカーサーから「生まれついての専制君主」と評されました。不倫問題は、マッカーサーとの関係を決定的に悪化させましたが、その能力の高さから、マッカーサーは戦争終結まで彼を手放すことができませんでした。

サザランドの政治思想は、ファランヘ党を賛美していたとされ、戦時下においては民主主義を放棄して独裁制を敷くべきだと主張したことがありました。

受章歴

殊勲十字章およびオーク・リーフ・クラスタ
陸軍殊勲章およびオーク・リーフ・クラスタ
* シルバースター

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