リチャード・チョーリー

リチャード・ジョン・チョーリーの生涯と業績

リチャード・ジョン・チョーリー（Richard John Chorley、1927年9月4日 - 2002年5月12日）は、イギリスの地理学者であり、20世紀後半の地理学界を代表する人物の一人です。特に計量地理学における貢献が大きく、一般システム理論を地理学に導入する上で中心的な役割を果たしました。

生い立ちと学歴

イングランド南西部のウェスト・カントリーで育ち、幼少期は自然豊かな環境で過ごしました。地元の小学校からマインヘッドのグラマースクールに進学し、その後、王立工兵として軍務に就きました。除隊後、オックスフォード大学のエクセター・カレッジで地理学を専攻し、地形学の研究を始めました。R・P・ベッキンセール教授の指導を受け、アメリカの大学院への留学を勧められました。

1951年には、フルブライト奨学金を得てコロンビア大学の地学部で地形発達の計量的研究に取り組みました。

キャリアの形成

コロンビア大学、ブラウン大学での研究生活は、1957年に家族の事情でイギリスへ帰国したことで中断されました。帰国後、ケンブリッジ大学の講師として採用され、その才能を発揮し、順調に昇進を重ねました。1970年にはリーダー、1974年には教授に就任しました。ケンブリッジ大学は、チョーリーの革新的なアイデアを育む上で重要な役割を果たしました。

チョーリーは、当時の主流であったウィリアム・モーリス・デイヴィスの地形輪廻説を批判し、計量モデルや一般システム理論に基づいた新たなパラダイムを提唱しました。ケンブリッジ大学の自然地理学研究グループは、彼の研究を強力に支援し、実験を行うための良好な環境を提供しました。

チョーリーは、自然地理学の分野で多数の論文を発表し、研究アプローチを体系化し、地表の形成過程や研究手法に新たな疑問を提起しました。特に、システムダイナミクスの概念を重視し、著書『Physical Geography: A Systems Approach』（1971年）や『Environmental Systems』（1978年）は、後続の研究者に大きな影響を与えました。また、気候学者のロジャー・バリーとの共著『Atmosphere, Weather and Climate』（1968年）や、『Water, Earth and Man』（1969年）など、多数の著作があります。

地理学への貢献

チョーリーは、自然地理学の枠にとどまらず、地理学全体に変革をもたらすべく幅広い分野にアプローチしました。ケンブリッジ近郊のマディングリー・ホールで毎年開催された研究集会は、多くの著作の基礎となり、地理学に大きな影響を与えました。特に『Models in Geography』（1967年）は、地理学におけるモデルの重要性を広く知らしめるきっかけとなりました。

さらに、年次刊行物『Progress in Geography』を創刊し、後に『Progress in Human Geography』と『Progress in Physical Geography』という2つの季刊誌に発展させました。これらの雑誌は、地理学の全領域における変化を記録し、評価する上で重要な役割を果たしました。

また、人文地理学の研究者とも積極的に交流し、ピーター・ハゲットとの共著『Frontiers in Geographical Teaching』（1965年）、『Models in Geography』（1967年）、『Network Analysis in Geography』（1969年）などを発表しました。

私生活

1965年にローズマリー・モアと結婚し、一男一女をもうけました。2002年に亡くなり、ケンブリッジのParish of the Ascension Burial Groundに埋葬されました。

学歴と職歴

1946年 - 1948年：王立工兵中尉
1951年：オックスフォード大学、BA (Hons)
1951年 - 1952年：コロンビア大学（ニューヨーク）地学部（フルブライト奨学金、スミス＝ミュント奨学金による）
1952年 - 1954年：コロンビア大学、地理学インストラクター
1954年：オックスフォード大学、MA
1954年 - 1957年：ブラウン大学（プロビデンス）、地学インストラクター
1958年：ケンブリッジ大学、地理学デモンストレーター
1962年：ケンブリッジ大学、地理学講師
1963年 - 1978年：マディングリー地理学会議共同主催
1964年：国際地理学連合計量技法コミッションイギリス代表。その後、1968年に座長。
1968年：Geographical Association、地理教育におけるモデルと計量技法の役割についての委員会、委員長
1970年 - 1975年：ケンブリッジ大学、地理学および地学分野教授委員会事務長
1970年：ケンブリッジ大学、地理学リーダー
1972年：ケンブリッジ大学、地理学部門代表代行（四旬節およびミカエル祭期間）
1973年：大学院委員会委員
1974年：ケンブリッジ大学、地理学ad hominem教授
1984年 - 1989年：ケンブリッジ大学、地理学部門代表
1984年 - 1989年、1990年：開発教育委員会委員長
1990年：ケンブリッジ大学シドニー・サセックス・カレッジ、副学寮長

受賞と栄誉

1967年：王立地理学会ギル記念賞
1974年：ケンブリッジ大学、Sc.D.
1974年：British Geomorphological Research Group、終身名誉会員（第1号）
1981年：アメリカ地理学会栄誉賞
1987年：王立地理学会パトロンズ・メダル
1988年：イタリア地理学会名誉会員
1988年：王立地理学会評議員

リチャード・ジョン・チョーリーは、計量地理学の発展に貢献し、地理学における定量的なアプローチを確立した重要な人物です。彼の研究は、地形学、水文学、気候学など幅広い分野に影響を与え、後世の研究者に大きな影響を与え続けています。

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