リチャード・ハーツホーン

リチャード・ハーツホーン（Richard Hartshorne, 1899年 - 1992年）は、アメリカの著名な地理学者であり、20世紀の地理学界を牽引した人物の一人です。彼は、地理学の方法論に関する重要な著作を多数発表し、その思想は世界中の地理学研究に大きな影響を与えました。

生い立ちと学歴

ハーツホーンは、ペンシルベニア州で牧師の父と作家の母の間に生まれました。兄は、後に著名な哲学者となるチャールズ・ハーツホーンです。1917年にプリンストン大学に入学し、当初は数学を専攻していましたが、エルズワース・ハンティントンとの出会いをきっかけに地理学に興味を持つようになります。その後、シカゴ大学大学院に進学し、本格的に地理学の研究を始めました。シカゴ大学では、エレン・センプルやダウエント・ホイットルセーなどの著名な地理学者から指導を受け、1925年にPh.D.を取得しました。

研究活動と主要業績

博士号取得後、ハーツホーンはミネソタ大学で教鞭をとり、その後、第二次世界大戦中はワシントンの参謀本部で都市機能や政治地理学に関する研究に従事しました。1945年からはウィスコンシン大学の教授として、亡くなるまでその職を務めました。

ハーツホーンは、ドイツ語にも堪能で、ドイツの地理学、特にアルフレート・ヘットナーの影響を受けていました。彼は、地理学の対象を物理的に視覚できる範囲に限定することに疑問を抱き、地理学の本質を深く追求しました。

1939年に発表した『地理学方法論』（The Nature of Geography）は、当時のアメリカ地理学界に大きな議論を巻き起こしました。この著書では、地理学の方法論について詳細に論じ、特に地理学者フレッド・シェーファーとの間で激しい論争が繰り広げられました。しかし、この著作は世界各国で翻訳され、日本でも地理学方法論の古典として広く受け入れられました。この著作の影響力は大きく、当時の地理学における主要な潮流を形成しました。

1959年には『地理学の本質』（Perspective on the Nature of Geography）を発表し、自身の地理学方法論に対する批判に応え、さらなる理論の発展を目指しました。また、彼は政治地理学の研究にも力を注ぎました。

学会活動と晩年

1948年、ハーツホーンはアメリカ地理学会（AAG）とアメリカ職業地理学者協会（ASPG）の合併に尽力し、統合後のAAGの会長に就任しました。1970年にウィスコンシン大学を退官した後も、研究活動を続け、1992年に93歳で生涯を閉じました。

主な著作

『地理学方法論』（The Nature of Geography, 1939年）
『地理学の本質』（Perspective on the Nature of Geography, 1959年）

まとめ

リチャード・ハーツホーンは、地理学の方法論を深く探求し、その後の地理学研究に多大な影響を与えた偉大な地理学者です。彼の著作は、今日でも地理学を学ぶ上で重要な文献として参照されています。

参考文献

* 竹内啓一・杉浦芳夫 編『二〇世紀の地理学者』古今書院、2001年

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