リチャード・パーマー・ジェイムス

リチャード・パーマー・ジェイムス

リチャード・パーマー・ジェイムス（Richard Palmer-James）は、1947年6月11日にイングランドに生まれた多才なミュージシャンであり、特に作詞家としてその名を広く知られています。彼のキャリアは多岐にわたり、プログレッシブ・ロックの巨人からディスコ・ミュージックの世界まで、幅広いジャンルで重要な足跡を残しています。1970年代初頭からは活動の拠点をドイツに移し、現在もミュンヘンで創作活動を続けています。音楽データベースサイトであるDiscogsには、500を超える彼のクレジットが登録されており、その膨大かつ多様な仕事ぶりを物語っています。

彼の音楽活動は、故郷であるボーンマスでのローカルバンドから始まりました。The Corvettes、The Palmer-James Group、Tetrad、Ginger Manといったバンドで演奏し、後にキング・クリムゾンやエイジアで活躍するベーシスト／ボーカリスト、ジョン・ウェットンとこの時期に出会っています。ウェットンとはその後、長年にわたり音楽的なパートナーシップを築くことになります。

1968年には、リチャード・パーマー名義で、後に世界的な成功を収めるバンド、スーパートランプ（Supertramp）の結成に参加しました。創立メンバーとしてギターとボーカルを担当するとともに、彼らの記念すべきデビュー・アルバム『スーパートランプ・ファースト』の歌詞を執筆しました。この時期にリック・デイヴィスと共作した楽曲「Goldrush」は、長らく未発表でしたが、2002年のアルバム『Slow Motion』で日の目を見ています。

1970年代に入り、ドイツのミュンヘンに居を移したパーマー・ジェイムスは、再びジョン・ウェットンと深く関わることになります。ウェットンが加入していたプログレッシブ・ロックの伝説的バンド、キング・クリムゾンにおいて、彼は1973年から1974年にかけての重要な時期、つまりアルバム『太陽と戦慄』、『暗黒の世界』、『レッド』という傑作群の作詞を一手に引き受けました。ロバート・フリップによるキング・クリムゾン第一期の活動停止後も、ウェットンや当時のメンバーだったデヴィッド・クロスらとの協力関係は続き、様々なプロジェクトに関わっています。

1978年には、ウェットン、そしてTetrad時代のバンドメイトであったW.J. Hutchesonと共に、ドイツ人ドラマーのCurt Cressを加えてジャック－ナイフ（Jack-Knife）を結成。活動初期に生まれた楽曲を中心に構成されたアルバム『アイ・ウィッシュ・ユー・ウッド』をわずか10日間という短期間でレコーディングしました。

また、彼はプログレッシブ・ロックとは対照的なジャンルであるディスコ・ミュージックにも関与しています。イタリアン・ディスコのパイオニア、La Biondaに英語の歌詞を提供したほか、1970年代後半にはLa Bionda関連のプロジェクトであるD.D.サウンド（D.D. Sound）の楽曲も数多く手がけました。さらに、1985年には元アラベスクのシンガー、サンドラの世界的ヒット曲「(I'll Never Be) Maria Magdalena」の歌詞を執筆しており、その作詞家としての多様性と成功を示しています。

ジョン・ウェットンとは生涯にわたる協力関係を続け、1997年には二人の共同名義による編集盤CD『モンキー・ビジネス 1972 - 1997』が発表されました。このアルバムには、キング・クリムゾンのライブで演奏されたもののスタジオ録音が存在しなかった未発表曲「ドクター・ダイアモンド」の初収録を含む、貴重な音源が収められています。ウェットンのソロアルバムにも作詞家として参加しています。

自身の名義での作品としては、2016年に初のソロ・アルバムとなる「Takeaway」をリリースしました。

リチャード・パーマー・ジェイムスは、バンドメンバーとしての活動は初期に限定されるものの、作詞家としてロック史に残る数々の名作に関わり、またジャンルを超えて活躍した稀有な存在です。彼の言葉は、キング・クリムゾンの内省的かつ抽象的な世界観から、ディスコやポップスの直接的な感情表現まで、幅広い音楽に見事に寄り添い、楽曲の魅力を引き出しています。

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