リチャード・プライヤー

リチャード・プライヤー

リチャード・プライヤー（Richard Pryor, 1940年12月1日 - 2005年12月10日）は、コメディアンかつ俳優として知られ、アメリカのエンターテインメント界に多大な影響を与えた人物です。彼はアメリカのイリノイ州に生まれ、少年期を過酷な環境の中で過ごしました。7歳でナイトクラブにドラマーとして登場し、その後14歳でコメディクラブの清掃員として働くようになります。この独特な道のりは、彼のユーモアと視点に深い影響を与えることとなります。

プライヤーは高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊し、2年間の軍務を経て除隊。その後、スタンダップコメディの舞台に立ち、全米を巡りながらコメディアンとしてのキャリアを築いていきました。1966年頃からは『エド・サリヴァン・ショー』などのテレビ番組に出演するようになり、一気に注目を集めました。

彼のコメディスタイルは非常にユニークで、時には挑発的にさえ思える内容を含んでいました。特に「ニガー」や「マザーファッカー」といった、アメリカでは使われることがためらわれる言葉を積極的に使用することで知られています。しかし、その破壊的ともいえるスタイルは、彼自身の鋭い人間観察と黒人差別に対する批判を表現していたのです。1979年にアフリカを訪れた後は「ニガー」という言葉を二度と使わないと宣言するなど、彼は自らの表現方法についても真剣に考え続けました。

1960年代後半から1980年代にかけて、プライヤーは映画にも多数出演しました。特に1970年代後半からは、俳優のジーン・ワイルダーとのコンビで『大陸横断超特急』などの成功をおさめました。プライヤーの影響は後の多くのコメディアンに及び、エディ・マーフィやクリス・ロックといった後輩たちが彼からインスパイアを受けています。ジェリー・サインフェルドもプライヤーを「スタンダップコメディにおけるピカソ」と評しています。

プライヤーはキャリアの中でエミー賞（1973年）、そして5回のグラミー賞受賞（1974年、1975年、1976年、1981年、1982年）を果たし、彼のユーモアの独自性を証明しました。また、1998年にはアメリカのユーモアにおける功績が認められ、ケネディ・センター・マーク・トウェイン賞を受賞しました。

彼の人生は華やかさとは裏腹に、長期にわたる薬物やアルコールの依存に苦しむ時期がありました。1980年には映画『おんぼろバスと8人の子供たち』の制作中にコカインの影響下で自らに火をつけ、大火傷を負い、一時的に活動を休止せざるを得ませんでした。このような苦悩の中でも、彼はスタンダップコメディの巨星であり続けました。

1985年には多発性硬化症と診断され、約20年の闘病生活を送りました。彼の健康は次第に悪化し、2005年12月10日に心臓疾患で亡くなりました。享年65歳でした。リチャード・プライヤーは、ただのコメディアン以上の存在であり、アメリカの文化およびコメディ界に永遠にその足跡を残しました。

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