リッチー・マコウ

ラグビー界の伝説、リッチー・マコウ（Richard Hugh McCaw）は、1980年 12月31日にニュージーランドで生を受けた元ラグビー選手です。主にフランカー、特にオープンサイドフランカーとして世界最高の評価を受け、ニュージーランド代表「オールブラックス」の主将として輝かしいキャリアを築きました。彼の代表キャップ数148はラグビーユニオン史上第2位という記録であり、ワールドラグビー（旧IRB）年間最優秀選手賞を3度受賞するなど、数々の栄誉に輝いています。

生い立ちと初期キャリア

マコウは、ニュージーランド南島、ノースオタゴ地方のオアマルで生まれました。実家はかつて農業を営んでいました。7歳でラグビーを始め、地元屈指の名門であるオタゴ・ボーイズハイスクールへと進学。卒業後は、ラグビー奨学制度を利用してリンカーン大学へ進み、農学を専攻しました。大学ではラグビーチームの一員としてプレーする傍ら、U-19、U-21といったニュージーランド代表のユース世代でも選出され、その才能を開花させます。19歳の時には、国内州代表選手権（NPC、現在のITM CUP）においてカンタベリー州代表に選ばれ、翌20歳にはスーパーラグビーの名門チーム、クルセイダーズへ入団。同年にオールブラックスにも選出され、ダニーデンで行われたアイルランド代表とのテストマッチで代表デビューを果たしました。このデビュー戦でいきなり最優秀選手に選ばれるという、鮮烈な印象を残しました。

オールブラックスでの軌跡

オールブラックスでのキャリアは順調に進み、2004年には初めてキャプテンを務める機会を得ました。そして2006年シーズンからは、名実ともにオールブラックスの正キャプテンとしてチームを牽引することになります。クラブチームであるクルセイダーズでも、2005年からキャプテンを務め、攻守の中心として活躍しました。個人としては、2006年、2009年、2010年にワールドラグビー年間最優秀選手賞を受賞。この賞を同一選手が3度受賞したのは、2001年の創設以来マコウが初めてのことでした。2011年9月24日には、ラグビーワールドカップ予選プールでのフランス代表戦において、ニュージーランド代表選手として史上初のテストマッチ100キャップを達成。そして、母国開催となったこの2011年ワールドカップでは、キャプテンとしてチームを24年ぶり、2回目となる優勝へと導きました。大会後には海外移籍の噂も流れましたが、2011年5月にニュージーランドラグビー協会と4年間の契約延長に合意し、国内最高クラスとされる年俸を受け取る選手として、ニュージーランドラグビーへの貢献を選びました。また、2011年ワールドカップでの功績を称え、ニュージーランド政府からナイトの勲位授与が非公式に打診されましたが、現役選手であること、年齢的に若すぎることを理由に、この打診を辞退しています。学業面では、在学中であったリンカーン大学が2011年12月、マコウの功績を称え、天然資源学専攻の名誉博士号を授与すると発表しました。これは在学生に対する名誉学位の授与としては異例のことでした（授与式は2012年4月に実施）。ラグビーキャリアの集大成として、2015年ワールドカップでは、チームが戦った全6試合中5試合でキャプテンを務め、ニュージーランド代表のワールドカップ史上初となる連覇という歴史的快挙に大きく貢献しました。この大会を最後に、2015年11月19日に惜しまれつつ現役生活からの引退を表明しました。

プレイスタイルと評価

マコウのプレイスタイルは、主にオープンサイドフランカーとして、まさに「ボールのあるところマコウあり」と称されるほどの広範囲な動きが特徴でした。攻守のすべての局面において存在感を示し、その運動量、状況判断能力、高いスキル、そして圧倒的なディフェンス能力は世界中のファンと対戦相手から畏敬の念を集めました。特に、ボールへの絡みや、一瞬の判断によるトライゲイン能力は卓越しており、テストマッチ通算で27トライ、135ポイントを獲得しています。

引退後と栄誉

現役引退後、マコウは異色のセカンドキャリアとして、商用ヘリコプターのパイロットに転身しました。また、ラグビー以外の分野でも栄誉に輝いています。2015年12月31日、自身の35歳の誕生日に、ニュージーランド最高の勲章であるニュージーランド勲章（Order of New Zealand）を受章しました。これは史上最年少での受章であり、その功績の大きさが伺えます（正式な授与式は2016年4月にニュージーランド総督より行われました）。マコウ自身も航空一家の出身で、祖父は第二次世界大戦の元戦闘機パイロット、父や叔父も飛行機免許を持っています。彼自身も自家用飛行機免許と自家用グライダーを所有しており、豊富な航空知識と経験から、航空イベントにゲストとして招かれることも多く、2011年にはチャリティー活動の一環としてグライダー飛行を行ったこともあります。

まとめ

リッチー・マコウは、その比類なきタフネス、卓越したスキル、そして圧倒的なリーダーシップで、ラグビー史にその名を深く刻んだ選手です。ワールドカップ連覇という偉業、異例の年間最優秀選手3回受賞、そして祖国ニュージーランドからの最高勲章受章は、彼のラグビー界への貢献と影響力の大きさを物語っています。引退後も新たな分野で挑戦を続ける彼の存在は、世界中の人々にインスピレーションを与え続けています。

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