リデリイン

リデリイン：発がん性が疑われるピロリジジンアルカロイド

リデリインは、ピロリジジンアルカロイドという化合物群に属する天然化合物です。キオン属などの植物から最初に単離され、その後、様々な植物、そして肉、穀物、牛乳、蜂蜜といった食品にも混入していることが確認されています。

リデリインの性質と存在

リデリインは、レトロネシンとriddelliic acidという物質が結合した構造を持っています。室温では無色から灰白色の結晶で、クロロホルムやアセトンには溶けますが、水には溶けにくい性質を持っています。光や熱に弱い性質も持ち合わせており、特に熱分解によって有毒な窒素酸化物を生成します。キオン属植物、特にSenecio riddelliiでは、植物体全体の最大18％をリデリインとその酸化物であるリデリイン-N-オキシドが占める場合もあります。

リデリインの合成経路

リデリインは植物の中で、オルニチンやアルギニンから始まる複雑な生合成経路を経て作られます。この経路は、プトレシン、ホモスペルミジン、トラケランタミジン、スピニジン、そしてレトロネシンといった中間体を経由し、最終的にレトロネシンとriddelliic acidの結合によってリデリインが生成されます。しかし、現在、リデリインの人工合成は実現していません。

リデリインの毒性と発がん性

リデリイン自体は毒性が低いですが、[肝臓]]で代謝されると細胞毒性を持つ中間体が生成されます。この中間体はDNAと結合し、DNAの損傷を引き起こします。このDNA損傷は、発がんプロセスの重要な要因と考えられています。[[国際がん研究機関]では、リデリインをヒトの発がん性が疑われる物質(グループ2B)に分類しています。

動物実験では、ラットやマウスへの経口投与により、肝臓がんや肺がんの発生率の上昇が観察されています。また、リデリインは遺伝子変異を引き起こすことも確認されています。ヒトにおいては、リデリインを含むハーブティーの摂取による肝障害の報告例があります。しかし、リデリインのヒトにおける発がん性については、明確な証拠はまだ得られていません。

ヒトへの曝露経路と健康影響

ヒトは、リデリインに汚染された食品（特にハーブティー、家畜製品）を摂取することで曝露する可能性があります。急性毒性としては、肝中心静脈閉塞症などの肝障害が報告されています。慢性的な曝露による影響は、発がん性を含め、さらなる研究が必要です。

歴史

リデリインは1939年にカナダの研究者によって初めて単離され、その化学構造は1942年に確認されました。

まとめ

リデリインは、自然界に存在する発がん性が疑われる物質です。食品への混入やハーブティーなどを通してヒトも曝露する可能性があり、その健康影響については継続的な研究が必要です。特に、肝臓への影響に注意が必要です。今後の研究により、より詳細なリスク評価と安全対策が確立されることが期待されます。

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