細胞毒性

細胞毒性とは

細胞毒性（Cytotoxicity）とは、物質や物理的作用が細胞に及ぼす有害な影響を指し、具体的には細胞の死滅、機能不全、または増殖阻害などを引き起こす性質を意味します。細胞傷害性とも呼ばれますが、一般的に「細胞毒性」は外来物質による影響を指し、免疫系などによる作用は「細胞傷害性」と区別されます。

細胞死の種類

細胞毒性の影響を受けた細胞は、主に以下のいずれかの過程を経て細胞死に至ります。

ネクローシス（壊死）: 細胞が膨張し、細胞膜が破壊され、内容物が漏出する現象です。
アポトーシス: 細胞質の収縮、核の凝縮、DNAの断片化などが起こる、プログラムされた細胞死です。二次的にネクローシスが起こる場合もあります。
オートファジー: 細胞内の不要な物質を分解する自食作用による細胞死です。

細胞毒性試験では、これらの細胞死に伴う現象を指標として毒性が評価されます。

細胞毒性試験の方法

細胞毒性試験では、通常、培養細胞を用いて毒性を評価します。評価方法は、細胞の種類や試験の目的に応じて様々です。

大きく分けて、以下の方法があります。

細胞数の直接計数: 顕微鏡下で生細胞と死細胞を直接数える方法（トリパンブルー染色など）。
コロニー形成法: 増殖可能な細胞から形成されるコロニー数を測定する方法。
特定物質の定量: 細胞膜破壊の有無、細胞の代謝活性などを指標に、光学的方法や放射標識化合物を用いて間接的に生存率・死亡率を見積もる方法。
細胞膜破壊の指標: 死細胞から漏出する乳酸脱水素酵素（LDH）の活性測定など。
生細胞の機能指標: 生細胞の還元力を利用するMTTアッセイなど。テトラゾリウム塩が還元されて発色する度合いを測定。
ATP定量: 生細胞のみが持つATP量をルシフェラーゼの発光で測定。
放射標識化合物: トリチウム標識チミジンなどの取り込みを測定。

細胞毒性試験の意義

細胞毒性試験は、医療機器や医薬品の安全性試験において重要な役割を果たします。特に、体内組織や血液に直接触れる医療機器の安全性評価では必須とされています。また、医薬品開発においては、毒性の初期スクリーニングや動物実験の代替法として用いられることがあります。

個体・器官レベルの毒性と細胞毒性は必ずしも一致しませんが、細胞毒性は潜在的な毒性につながる可能性があります。近年では、培養細胞を用いた皮膚モデルにおける細胞毒性と皮膚刺激性との相関が示されており、化粧品開発など動物実験が難しい分野で活用されています。

抗癌剤開発においては、癌細胞に選択的な細胞毒性を示す薬剤のスクリーニングに細胞毒性試験が用いられます。

細胞傷害性（免疫反応）

体内では、免疫反応として特定の細胞に対する細胞傷害性が働いています。

抗体依存性細胞傷害（ADCC）: 抗体で標識された細胞が細胞傷害性T細胞に攻撃されます。
リンパ球依存性細胞傷害: 異常細胞がナチュラルキラー細胞に攻撃されます。
補体依存性細胞傷害

また、腫瘍壊死因子などの細胞傷害性サイトカインは、細胞にアポトーシスを誘導します。

参考資料

日本組織培養学会 編『細胞トキシコロジー試験法』朝倉書店

関連項目

プログラム細胞死
溶血
外毒素
細胞周期
選択毒性
毒性学
* 免疫学／血液学

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