リトル・グリーンメン (ウクライナ危機)

リトル・グリーンメン：謎に包まれた兵士たちの正体

「リトル・グリーンメン」という言葉は、2014年のウクライナ危機において、突如として現れた所属不明の武装兵士たちを指す隠語として使われ始めました。彼らはロシア軍の武器や装備を身に着けていましたが、軍の徽章を一切つけず、顔を覆面で隠していたため、その正体は長らく謎に包まれていました。

クリム侵攻と「礼儀正しい人々」

彼らが最初に目撃されたのは、ロシアによるクリミア併合の最中です。シンフェローポリ国際空港やクリミアの大半の軍事基地、さらにはシンフェローポリの議会までもが彼らに占拠・封鎖されました。しかし、彼らは住民の日常生活に干渉することはほとんどなかったため、ロシア国民や親ロシア派の住民からは「礼儀正しい人々」とも呼ばれました。

正体はロシア特殊部隊スペツナズ？

2015年4月、退役したロシア提督イーゴリ・カサトノフは、「リトル・グリーンメン」がロシア特殊部隊「スペツナズ」のメンバーであったと証言しました。彼の情報によれば、クリミアに派遣されたロシア軍部隊には、ヘリコプター6機とIl-76輸送機3機で送り込まれた、総勢500名もの兵士が含まれていたとされています。

さらに、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も2015年12月、ウクライナにおけるロシア軍の存在を簡潔に認めましたが、あくまで特定の任務に従事していたものであり、ウクライナにおけるロシア正規軍の存在を示すものではないと付け加えました。

武器と装備の分析

フィンランドの軍事誌『Suomen Sotilas』は、2014年3月に「リトル・グリーンメン」の写真から、彼らの装備と武器を分析しました。その結果、彼らが使用している武器と装備の一部は、ロシア連邦軍のみに提供されているものであることが判明しました。具体的には、以下のような装備が確認されています。

新品のEMRカモフラージュ戦闘服
新品の6Sh112戦術ベスト
新品の6B27, 6B7-1M複合ヘルメット
新品の7.62mm PKP機関銃
6B26複合ヘルメット (ロシア連邦空挺軍のみ使用)
6Sh92-5戦術ベスト (ロシア連邦空挺軍のみ使用)
Gorka-3戦闘服 (ロシア特殊部隊と山岳部隊のみ使用)
Smersh AK/VOG戦術ベスト (ロシア特殊部隊のみ使用)

これらの分析結果から、彼らはモスクワ近郊のクビンカに拠点を置く、ロシア空挺軍第45独立親衛特殊任務連隊の可能性が非常に高いと結論付けられました。

ロシア政府の公式反応

当初、プーチン大統領は「グリーンメン」がロシア軍ではないと主張し、地元民兵組織がウクライナ軍から武器を奪ったと述べていました。しかし、NATOの欧州連合軍最高司令官フィリップ・ブリードラブ大将は、「グリーンメン」が実際にはロシア軍であったと指摘しました。

その後、プーチン大統領は「重装備で統率のとれたグループがクリミアの空港と港を占拠したのは事実だが、彼らは単なる自警団であり、地元の軍用ショップでロシア風の制服を購入しただけかもしれない」と述べました。しかし、ウクライナでは狩猟目的以外の火器の販売や携帯が法律で禁止されているため、この主張は現実的ではありませんでした。

最終的にプーチン大統領は、2014年4月17日に、ロシアの特殊部隊が地元の人々の保護や国民投票に向けての状況を作るために、クリミアの出来事に関与していたことを公に認めました。さらに、ロシア軍がクリミアにおいてウクライナ軍をブロックしていた事実も認めました。

ドンバスでの再出現

「リトル・グリーンメン」は、ウクライナ内戦中の2014年8月にも、ドネツィク州コロスキーで目撃されています。ロイター通信の特派員が報じたところによると、ロシア訛りの重装備兵が週末に現れ、道路を封鎖したとされています。また、白いバンドをつけ、同一の識別マークをつけた10人の兵士がDzerkalne村付近でウクライナ軍に拘束されました。拘束された兵士は、ロシア軍の空挺兵であることを認めました。BBCは、ドンバスにおける徽章なしのロシア軍を「幽霊軍」と表現しました。

2015年1月には、ウクライナの報道機関「censor.net」が、ルハーンシクで緑色の軍服を着た8人の兵士が街頭をパトロールしている映像を公開しました。一部の兵士はロシア軍のみが使用するAS Valを装備していました。

参考文献

“How Russia outfoxes its enemies”. (29 January 2015). https://www.bbc.com/news/magazine-31020283 7 April 2015閲覧。

関連項目

2014年クリミア危機のタイムライン

「リトル・グリーンメン」は、現代の紛争における情報戦とプロパガンダの象徴として、その存在は今後も語り継がれることでしょう。

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