リトル・ランナー

『リトル・ランナー』（原題：Saint Ralph）は、2004年にカナダで制作された感動作です。9月11日にトロント国際映画祭で初お目見えし、翌年には劇場公開されました。

舞台は1953年のカナダ、ハミルトン。主人公は14歳のラルフ・ウォーカー。彼は戦争で父を亡くし、母は病気で入院しています。周囲には祖父母の家にいると説明していますが、実際は校則違反を繰り返すやんちゃな少年です。特に校長であるフィッツパトリック神父には目をつけられています。

ラルフの心の支えである母は、意識不明の重体となります。看護師のアリスから、奇跡でも起こらない限り回復の見込みはないと告げられます。絶望するラルフですが、クロスカントリー部のコーチであるヒバート神父が部員に「ボストンマラソンで優勝したら奇跡だ」という言葉を発したのを耳にします。

ラルフは、ボストンマラソンで優勝すれば母が奇跡的に回復すると信じ、トレーニングを開始します。親友のチェスターとクレアの協力を得ながら、独自の過酷なトレーニングをこなします。6000キロカロリーもの食事、荷物を背負った丘登り、真冬のプール飛び込みなど、その方法は独特で危険なものでした。

アリスはボブスレー選手時代の経験を生かし、ラルフにウエイトトレーニングを指導。しかし、地元の10マイルレースではペース配分が分からず、完走するのもやっとの状態でした。それでも、ラルフは雨の日も風の日も雪の日も走り続けました。

そんなラルフの姿に、かつて走ること全てを捧げていた自分の姿をみたヒバート神父は、ラルフのコーチになることを決意します。神父はラルフにマラソンに必要な技術を徹底的に教え込みます。その甲斐あって、2ヶ月後に行われた地元のマラソン大会で優勝を収めます。

ラルフの「奇跡」という言葉が、神への冒涜だと考えたフィッツパトリック校長は、ボストンマラソンへの参加を理由にラルフを退学させようとします。また、ニーチェを引用するヒバート神父にも処分をちらつかせます。しかし、当初はラルフをからかっていたクラスメイトたちも、彼の努力を認め、尊敬するようになります。

その後、ラルフの不注意で家が火事になり、大切な家族の写真も失ってしまいます。意気消沈したラルフは走ることを諦めかけますが、チェスターの「校長を最高に怒らせることができるぞ！君は優勝できる」という言葉で奮起。学校を休み、ボストンへと向かいます。ヒバート神父もまた、「私は人助けをするために神父になったのだ」と校長に告げ、ラルフを追いかけます。

ボストンマラソン当日。アリスは病室でラジオをつけ、母の耳にレースの様子を届けようとします。クレアは教会で祈り、チェスターは学校の放送室を占拠して中継を流します。皆がラルフを応援する中、ラルフは奇跡を起こそうと走り出します。

結果は優勝できませんでしたが、病院と学校ではラルフを温かく迎え入れます。クレアもまた、ラルフを称えます。ヒバート神父に「来年のオリンピックで優勝したい」と宣言するラルフ。そして、母の容態にも変化が見られます。

この映画は、困難に立ち向かう少年の勇気と、周りの人々の支えを描いた感動的な作品です。諦めない心、友情、そして奇跡への信仰が織りなす物語は、見る者の心に深く響くことでしょう。

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