リプリー 暴かれた贋作

『リプリー 暴かれた贋作』（原題: Ripley Under Ground）は、2005年に製作されたアメリカ合衆国発のサスペンス映画です。ロジャー・スポティスウッド監督によるこの作品は、パトリシア・ハイスミスの1970年の小説『贋作』を原作としており、希代の天才詐欺師、トム・リプリーを再びスクリーンに呼び戻しました。主演はバリー・ペッパー、共演にはクレア・フォーラニ、アラン・カミングら実力派俳優が名を連ねています。

物語は、ロンドンを舞台に幕を開けます。リプリーは、新進気鋭の画家ダーワットの自殺という衝撃的な事件に遭遇します。ダーワットは恋人にプロポーズを断られた直後、車で木に衝突し命を落としたのです。現場にはリプリー、ダーワットの恋人シンシア、画商のジェフ、そしてダーワットのライバル画家であるバーナードが居合わせました。

ジェフは、売れっ子のダーワットとはいえ、この段階での死は絵の売買に悪影響だと指摘します。そこでリプリーは、4人によるダーワットの死の隠蔽を提案します。この提案は、一見すると奇妙な連帯感を生み出しますが、それぞれの思惑が渦巻く危険な協定の始まりでもありました。

その後、ダーワットの作品を熱心に求めるアメリカ人バイヤー、マーチソンが現れます。全作品が売却済みだと告げられたマーチソンは、強引に小切手をジェフに手渡すのです。困り果てたジェフはリプリーらに相談し、リプリーはダーワットの未完の作品をバーナードが完成させ、それをダーワットの作品として売るという大胆な計画を立案します。シンシアを巧みに利用しながらバーナードを説得するリプリーの策略は、まさに天才的な詐欺師の面目躍如といったところです。

一方、リプリーはフランス人留学生エロイーズと出会い、彼女がフランスの大富豪の娘であることを知ります。この出会いが、彼の計画に新たな局面をもたらすことになるのです。

一見、全てが順調に進んでいるかに見えた計画でしたが、マーチソンは購入した絵が偽物であることに気づいてしまいます。ダーワットに会わせろと迫るマーチソンに対し、リプリーはなんとダーワットになりすまして彼と対峙するのです。この大胆不敵な行動は、彼の命を危険にさらすことになるのでしょうか。

映画『リプリー 暴かれた贋作』は、アメリカでは劇場公開されず、2005年11月に開催されたAFI映画祭で初上映されました。日本では劇場公開されませんでしたが、2009年8月28日にDVDが発売され、日本国内でも多くの観客に鑑賞されました。

この作品に対する評価は様々です。バラエティ誌のロバート・ケーラーは、ハイスミスの描くリプリー像を軽薄に扱っているとして批判的な見解を示しています。彼は、映画のトーンが定まらず、ヒステリックな風刺と洗練されたユーロ・スリラーの間で迷走していると指摘し、バリー・ペッパーの演技についても、リプリー役を演じきるには不十分だと酷評しています。

しかし、ハイスミスの原作小説の世界観を映像化しようとした試み、そして、リプリーという魅力的な犯罪者像を改めて提示した点において、この映画は一定の評価を得ていると言えるでしょう。様々な解釈が可能な作品であり、観客自身の視点によって異なる印象を受けることでしょう。

本作は、過去に映画化された他のリプリー作品、『太陽がいっぱい』『アメリカの友人』『リプリー』『リプリーズ・ゲーム』と共に、リプリーシリーズの重要な一作として位置付けられています。原作小説『贋作』（パトリシア・ハイスミス著、上田公子訳、河出文庫）と合わせて鑑賞することで、より深くこの作品の世界観を理解できるでしょう。

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