リプリーズ・ゲーム

『リプリーズ・ゲーム』（Ripley's Game）

『リプリーズ・ゲーム』は、2002年にイタリア、イギリス、アメリカ合衆国で製作されたサスペンス映画です。監督はリリアーナ・カヴァーニが務め、主演はジョン・マルコヴィッチが演じるトム・リプリー、そしてダグレイ・スコットが共演しています。

本作の原作は、パトリシア・ハイスミスが1974年に発表した小説『アメリカの友人』です。この小説は過去にも映画化されており、ヴィム・ヴェンダース監督、デニス・ホッパー主演で製作された1977年の西ドイツ・フランス合作映画『アメリカの友人』がよく知られています。

『リプリーズ・ゲーム』は、2002年 9月2日にヴェネツィア国際映画祭で初めて公開されました。日本では劇場公開されませんでしたが、2007年 4月25日にDVDがリリースされています。

物語の概要

主人公のトム・リプリーは、美術品の贋作を専門に扱う裏社会の人物です。ベルリンでの仕事で大金を得た彼は、イタリアの歴史ある邸宅を購入し、ハープシコード奏者の美しい妻と共に優雅な生活を送っています。リプリーは本職の殺し屋ではありませんが、必要とあらば躊躇なく他者の命を奪う冷酷さを持ち合わせています。

ある日、かつての犯罪仲間であるリーヴスがリプリーに殺しを依頼してきます。リーヴスはベルリンのマフィアと縄張り争いを繰り広げており、敵対するボスの排除を計画していました。リプリーは一度は依頼を断りますが、自らは手を出さず、全く関係のない第三者を利用して計画を実行するという発想に至ります。

リプリーが標的として目をつけたのは、近所に住む額縁職人のジョナサン・トレヴァニーでした。ジョナサンは骨髄性白血病を患い、余命宣告を受けており、残される妻子の将来を深く案じていました。さらに悪いことに、ジョナサンは以前、リプリーの美術品に対する審美眼を公然と批判していたのです。リプリーにとって、このように気に入らない人物を思い通りに操り、犯罪へと追い込むことは、まるで単なるゲームに過ぎない行為でした。

面識のないリーヴスから突然「儲け話」があると呼び出されたジョナサンは、事態が理解できませんでした。しかもその依頼が殺人であると知り、彼は驚愕してその場から逃げ帰ります。しかし、報酬が10万ドルに上乗せされたと聞かされると、金銭的な困窮と家族への思いから心が揺らぎ、ついに殺人を請け負ってしまいます。

ロシアン・マフィアのボス殺害は、素人であるジョナサンにも容易に成功を収めました。ところが、リーヴスはジョナサンにさらなる犯行を強要します。最初の殺人をマフィア間の抗争に見せかけるため、今度はロシア系と対立するウクライナ系のボスも殺害しろと言うのです。ここで手を引けば、いずれジョナサンが犯人であることが露見し、家族に報復が及ぶとリーヴスは脅迫します。ジョナサンは追い詰められ、二度目の殺害依頼も引き受けることになります。

しかし、二度目の殺人は素人のジョナサンにとって、手に余る困難な状況でした。それでも、予想もしなかったリプリーからの手助けもあり、ウクライナ系マフィアのボスの殺害も完了します。ところが、些細なミスからリーヴスの関与がマフィアに知られてしまったのです。事態はリプリーの思惑を超え、ジョナサンと共に追っ手と対峙することになったリプリー。「ゲーム」のはずだった計画は、やがて血生臭い抗争へと発展していくのでした。

キャスト

トム・リプリー：ジョン・マルコヴィッチ
ジョナサン・トレヴァニー：ダグレイ・スコット
リーヴス：レイ・ウィンストン
サラ・トレヴァニー：レナ・ヘディ
* ルイーザ・ハラーリ：キアラ・カゼッリ

評価

本作は批評家から概ね好意的に受け止められています。映画レビューサイトRotten Tomatoesによれば、24件のレビューのうち92%が高評価を与えており、平均点は10点満点中7.3点という高評価を得ています。批評家の一致した見解として、ジョン・マルコヴィッチによるトム・リプリーの「期待通りにいやらしい演技」が、ハイスミスが生み出したソシオパス的なキャラクターを見事に表現している点が挙げられています。

リプリーズ・ゲーム