リボウィリア

リボウィリア：RNAウイルスを包括する新たな分類群

リボウィリア（Riboviria）は、2018年に国際ウイルス分類委員会（ICTV）によって提案された、RNAを遺伝物質とするウイルスの新しい分類群です。この分類群に属するウイルスは、ゲノム複製においてRNA依存性RNAポリメラーゼ、またはRNA依存性DNAポリメラーゼ（逆転写酵素）という酵素を利用するという共通の特徴を有しています。

リボウィリアは、従来のウイルス分類体系とは異なるアプローチに基づいて構築されました。ボルティモア分類では、ゲノムの種類と複製機構に基づいてウイルスを分類していますが、リボウィリアはゲノムの複製機構という単一の基準によって分類を構築しています。そのため、ボルティモア分類のIII群（二本鎖RNAウイルス）、IV群（一本鎖プラス鎖RNAウイルス）、V群（一本鎖マイナス鎖RNAウイルス）、さらには逆転写酵素を用いる一部のDNAウイルスまでもがリボウィリアに含まれるという、非常に多様なグループとなっています。

しかし、これらの多様なウイルスは、単一の共通祖先から進化してきたと考えられており、この点がリボウィリアという分類群を正当化する重要な根拠となっています。この共通祖先から分岐した二つの主要な系統が、オルソルナウイルス界とパラルナウイルス界です。

オルソルナウイルス界 (Orthornavirae)

オルソルナウイルス界は、RNA依存性RNAポリメラーゼのみを用いてゲノムを複製するRNAウイルスを含みます。この界は、さらに複数の門に細分化されています。それぞれの門は、ゲノムの構造や宿主の範囲など、様々な特徴に基づいて分類されています。主な門には以下のようなものがあります。

ドゥプロルナウイルス門 (Duplornaviricota): 二本鎖RNAゲノムを持つウイルス
キトリノウイルス門 (Kitrinoviricota): プラス鎖RNAゲノムを持ち、真核生物に感染するウイルス
レナルウイルス門 (Lenarviricota): プラス鎖RNAゲノムを持ち、原核生物に感染するウイルス
ネガルナウイルス門 (Negarnaviricota): マイナス鎖RNAゲノムを持つウイルス
* ピスウイルス門 (Pisuviricota): プラス鎖RNAまたは二本鎖RNAゲノムを持つウイルス

パラルナウイルス界 (Pararnavirae)

パラルナウイルス界は、ゲノム複製において逆転写酵素を用いるウイルスを含みます。これは、RNAゲノムを一旦DNAに逆転写し、その後DNAを鋳型としてRNAを合成するという複雑な複製機構を持つウイルスです。レトロウイルスなどがこの界に含まれ、ゲノム複製において逆転写というステップを経る点がオルソルナウイルス界との大きな違いです。この界は、アルトウェルウイルス門など複数の門に分類されます。

リボウィリアの分類体系の意義

リボウィリアという新しい分類群の提案は、ウイルス分類学において大きな進歩となりました。従来の分類体系では捉えきれなかったウイルス間の進化的な関係性を明らかにし、ウイルスの系統進化を理解する上で重要な役割を果たしています。また、リボウィリアの分類体系は、新たなウイルスの発見や分類にも役立つと期待されています。今後、さらなる研究によって、この分類体系はさらに精緻化されていくでしょう。 リボウィリアの分類体系は、ウイルス研究の進展に伴い、継続的に見直され、更新されていく動的なものです。 新たなウイルスの発見や分子生物学的な知見の蓄積によって、分類体系に修正が加えられる可能性があります。

未分類のウイルス

リボウィリアには、オルソルナウイルス界、パラルナウイルス界のいずれにも分類されないウイルスも存在します。Polymycoviridae科、Sarthroviridae科、Albetovirus、Aumaivirus、Papanivirus、Virtovirusなどは、その例です。これらのウイルスは、今後の研究によってより詳細な分類がなされる予定です。

もう一度検索