リボルバー・リリー

長浦京氏が2016年に発表したスパイ・アクション小説が『リボルバー・リリー』です。講談社から刊行され、その年の「週刊文春ミステリーベスト10」で12位に選ばれたほか、第19回大藪春彦賞を受賞するなど、高い評価を獲得しました。そして、2023年には豪華キャストを迎えて実写映画化されています。

物語の舞台は、大正時代の終わり頃、華やかな文化と不穏な空気が入り混じる東京。主人公の小曾根百合は、かつて裏世界で「リボルバー・リリー」の異名で恐れられた、百発百中の射撃術を持つ伝説的なスパイでした。しかし彼女はすでに第一線から身を引き、今は東京の花街・玉ノ井で銘酒屋の女将として、過去を隠して静かな日々を送っていました。

そんな百合の平穏な日常は、ある日突然破られます。陸軍の巨額な隠し資金の行方を示す重要な秘密を握る少年、細見慎太が現れたのです。彼は、何者かに惨殺された家族のただ一人の生き残りであり、父親から百合のもとへ託されました。慎太を追って現れたのは、陸軍の精鋭部隊。少年を保護した百合は、その瞬間から陸軍から命を狙われる逃亡者となります。

映画版では、関東大震災の翌年、大正13年（1924年）から物語が始まります。秩父の洋館で発生した凄惨な事件により、慎太は父・欣也の遺志を継ぎ、ある秘密文書を携えて東京へ向かいます。欣也は、軍部が進める戦争計画を阻止するため、その裏金に関する情報を反戦派の海軍提督、山本五十六に届けようとしていたのです。百合は、かつての仲間であった慎太の父・欣也や、彼を匿っていた筒井国松の死を知り、真相を探る中で追われる慎太と運命的に再会します。

追っ手に囲まれ絶体絶命の状況で慎太を救出した百合は、彼と共に東京中を逃げ惑うことになります。行く先々で待ち受ける陸軍の追撃に対し、百合は封印していた「リボルバー・リリー」としての能力を解き放ちます。卓越した射撃技術と冷静な判断力で、次々と迫りくる暗殺者や兵士たちを撃退していく百合。逃避行の中で、慎太が託された秘密文書が、日本を戦争へと向かわせる陸軍の隠し資金の場所を示すものであることを知った百合は、彼の父の願いを叶えるため、共に海軍省を目指すことを決意します。

陸軍による苛烈な追跡網が張り巡らされた東京を舞台に、百合と慎太の決死の旅が続きます。かつての裏社会で培った人脈や知略を駆使し、様々な困難を乗り越えていく百合。血まみれになりながらも、決して少年を諦めず、彼の未来を守るために戦い続けます。そしてついに、山本五十六のもとへたどり着いた百合は、未来への希望を託します。慎太の安全を見届けた百合の前には、しかし新たな敵が立ち塞がります。「リボルバー・リリー」の戦いは、まだ終わらないことを予感させるエンディングとなっています。

2023年に公開された映画版は、行定勲監督がメガホンを取り、主人公の小曾根百合を綾瀬はるかが演じました。圧倒的なアクションシーンが話題を呼び、主演の綾瀬はるかは第48回報知映画賞および第47回日本アカデミー賞で優秀主演女優賞を受賞するなど、高い評価を得ました。三重県桑名市や群馬県沼田市など、各地での大規模なロケーション撮影も行われています。

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