リュドミラ・ズィキナ

リュドミラ・ズィキナ：ロシア民謡の女王

リュドミラ・ズィキナ（1929年6月10日 - 2009年7月1日）は、ソ連およびロシアの歌手であり、「ロシア民謡の女王」と称されました。彼女はロシア語での大衆歌曲を幅広く歌い上げ、多くの聴衆に愛されました。ズィキナは、その独特の音色と豊かな声域で知られ、特に中低音域の響きが際立っていました。

経歴の初期

ズィキナは、ソ連時代のモスクワに生まれました。1947年、第二次世界大戦後の全ロシア歌唱コンクールに出場したことがきっかけで、彼女の才能を見出したピャトニツキー合唱団の指揮者ヴラジーミル・ザハーロフによって同合唱団に入団。その後、約13年間にわたりソリストとして在籍し、多くの演奏機会に恵まれました。この期間中、彼女は他の団体での客演やラジオ出演、レコーディングを行い、徐々に名声を高めていきました。

栄光の時代

1960年以降、ズィキナはモスコンツェルトに所属するソロ歌手として活躍し、特に彼女の音楽が政治的に重要視された時代背景の中で、非常に大きな影響力を持つ存在となりました。ソ連文化大臣エカチェリーナ・フルツェワとの親しい関係も影響し、彼女は多くの公演で厚遇を受けるようになりました。また、ブレジネフ書記長の愛唱歌手であるとも言われ、1970年にはレーニン勲章を受章するなど、数多くの賞を獲得しました。さらに、1973年にはソ連邦人民芸術家に認定され、その名声は国内外に広がりました。

彼女は冷戦時代にも活発に海外公演を行い、日本を含む様々な国での演奏歴がありました。1977年にはロシア民謡アンサンブル「ロシア」を創設し、ソリストとしてだけでなく指導者としても活動しました。

人生の晩年

ズィキナは晩年には糖尿病を患うようになり、2009年には心筋梗塞のためモスクワで亡くなりました。享年80歳で、ノヴォヂェーヴィチエ墓地に埋葬されています。私生活では、離婚や死別を経験し、内縁を含む5人の夫を持ちましたが、子供はありませんでした。

音楽的特徴

彼女の歌唱においては、美しいメゾソプラノの声が特徴的で、特に深みのある甘い音色が聴く人々を魅了しました。ズィキナという名前はロシア語で「大声」を意味する言葉に由来していると言われています。

彼女が歌った「ヴォルガは流れる」は、ズィキナの代表曲として知られており、今なお多くの人々に親しまれています。ロシアの国民的な民謡として視覚的にも聴覚的にも深い感銘を与える作品であり、彼女の歌唱は作品に命を与えるものとなりました。

評価

その才能は多くの人々に認められ、作曲家のショスタコービッチはズィキナを「優れた歌い手以上の存在であり、歌の共同制作者であり指揮者である」と称賛しました。彼女の音楽的業績はロシア文化に大きな影響を与え、彼女の名声は今もなお色あせることがありません。

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