リョウメンシダ

リョウメンシダの概要

リョウメンシダ（Arachniodes standishii）は、オシダ科カナワラビ属に属するシダの一種で、特徴的な軟らかい葉を持ちます。この植物の名前の由来は、葉の表と裏がほとんど区別がつかないことにあります。リョウメンシダは、日本全国で見られる常緑性の多年生草本です。

特徴

このシダの根茎は太く、鱗片が多くついており、地面を短く這うように広がっています。葉は束生し、比較的長い葉柄を持ち、葉柄の基部には密に生えた線状の鱗片が存在しますが、上部はよりこまやかなものとなっています。鱗片は淡褐色で、縁は滑らかです。葉自体は3回から4回羽状に裂け、全体的に長卵形をしており、先端が尖っています。また、基部は円形または心形で、全長は40-65cm、幅は15-30cmになります。小羽片は楕円形で、先端が尖るか、または鈍い形をしています。二次小羽片も存在し、縁に鋸歯が見られることがあります。

葉の質感は紙質で淡緑色をしており、特に胞子嚢群が形成される部分を除けば、葉表と葉裏は似たような外観を持っています。胞子嚢群は葉脈の先端に生じ、秋から冬に成熟します。胞子には葉緑体が含まれ、緑色に見えるのもリョウメンシダの特異なポイントです。

和名の由来

和名の「両面シダ」は、葉の表と裏の色調がほとんど同じであることに由来します。牧野富太郎の文献によると、この葉質の似通いを指摘していますが、羽軸による印象の違いも見られます。また、このシダの英名である「upside-down fern」は、葉の表と裏が逆さまになっているように見えることから名付けられています。さらに、別名として「コガネシダ」があり、これは裂片の縁が裏側に反り返る特性から、美しい外観を引き立てています。

分布と生育環境

リョウメンシダは、北海道から九州まで日本各地に分布し、特に森林の下部に生息することが多いです。湿気のある谷間や斜面を好むため、群生しやすく、スギの植林されている場所で目にすることが一般的です。そのため、スギ林と深い関係があるシダとして認識されています。

近縁種

同属のカナワラビは、金属光沢のある硬い葉を持つことで知られていますが、リョウメンシダとは異なる外観をしています。また、似た外観を持つシノブカグマ (A. mutica) も存在しますが、リョウメンシダとの違いは鱗片の配置や生育環境に顕著です。特に本種は、細かく裂けた葉と独特の見た目から、比較的簡単に区別が可能です。平地やスギ林に生育するため、他に似た種がないとも言われています。

雑種

リョウメンシダから派生したと思われる雑種もいくつか知られており、カワズカナワラビ（×コバノカナワラビ）やジンムジカナワラビ（×ホソバカナワラビ）などが存在します。

参考文献

• - 村田威夫、谷城勝弘、『野外観察ハンドブック シダ植物』(2006)
• - 牧野富太郎原著、『身牧野日本植物圖鑑』(2008)
• - 池畑怜伸、『写真でわかるシダ図鑑』(2006)
• - 北川淑子、『シダハンドブック』(2007)
• - 中池敏之、「イノデ」：『朝日百科 植物の世界 13』(1997)
• - 中池敏之、『新日本植物誌 シダ篇』(1982)
• - 光田重光、『しだの図鑑』(1986)

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