リラックス (雑誌)

『リラックス』とは

マガジンハウスより1996年に創刊され、2006年に惜しまれつつ休刊した男性向けカルチャー誌『リラックス』（relax）。単なるファッションやモノの紹介にとどまらず、独自の視点で国内外の様々な文化を取り上げ、多くの読者に影響を与えました。

創刊とコンセプト

『Olive』や『Hanako』といった女性誌を成功に導いた編集者、椎根和氏が創刊編集長を務め、1996年5月号としてスタートしました。創刊時のキャッチコピーは「Magazine for Relax Age」。初期は特定のテーマに関するモノを網羅的に紹介するスタイルが特徴でしたが、7号目で「Goods Style Magazine」へとコンセプトを変更し、モノとストリートファッションの中間をいく誌面へとシフトしました。この頃には、後に国際的に活躍するビデオジャーナリスト、後藤健二氏も連載を持っていました。ちなみに、『リラックス』の商標権はマガジンハウスではなく、三田智恵子氏が所有していました。

岡本仁体制と文化への傾倒

1998年9月号からは、『BRUTUS』編集部から異動してきた岡本仁氏が編集長を引き継ぎます。椎根氏が岡本氏を後任に選んだ理由は「生意気そうだから」だったと言われています。この編集長交代を機に、誌面は縦組から横組へと刷新され、キャッチコピーも「fabulous magazine for man in cafe」に変更されました。1998年10月号では、当時まだあまり知られていなかったクリエイティブ集団GROOVISIONSを大特集するなど、先鋭的なカルチャー路線を深めます。しかし、こうした独自路線は読者層の拡大には繋がらず、販売部数は低迷。1999年3月号での休刊が一度決定します。この時期、マガジンハウスは『pink』や『楽』など、複数の雑誌をほぼ同時期に休刊させていました。

予期せぬ完売と劇的な復刊

ところが、皮肉なことに休刊が社内で決定した直後に発売された1999年2月号と、本来最後の号となるはずだった3月号が、立て続けに完売するという異例の事態が発生します。この反響を見た若手社員を中心に、雑誌の存続を求める復刊運動が巻き起こり、100人を超える署名が集まり、社長の赤木洋一氏に提出されるに至りました。社長は、もし採算の取れるビジネスモデルを再構築できるならば復刊を検討すると提案。岡本氏は新設された雑誌研究室に異り、約3〜4ヶ月にわたり企画を練り直し続けた結果、異例の復刊が決定しました。

復刊後の多角展開と終焉

2000年2月号から、『リラックス』は無事復刊を果たします。アートディレクターは、休刊中に『POPEYE』へ移籍した細山田光宣氏に代わり、小野英作氏が就任しました。復刊後の『リラックス』は、本誌に留まらず、フリーペーパーの配布、女性版増刊『relax for GIRLS』の発行、クリエイターやアーティストに焦点を当てた単行本シリーズ『relax library』、写真家ホンマタカシ氏の写真集『NEW WAVES』といった特別編集ムックなど、多岐にわたるメディア展開を積極的に行いました。しかし、こうした試みも販売部数の劇的な改善には繋がらず、2004年10月号でほとんどのレギュラー連載が終了。続く11月号で岡本氏が編集長を退任し、誌面は全面的なリニューアルを実施しましたが、状況を打開できず、2006年9月号をもって再び、そして今度は完全に休刊となりました。

ムックとしての再起動

本誌休刊後も、『リラックス』が培った世界観への根強い支持は続きました。2016年には『2016年のリラックス。』として、そして2020年には『2020年のリラックス。』として、ムック形式で一時的ながらも「復刊」を果たしています。特に2020年のムックでは、岡本仁氏をはじめ、中島敏子氏、横山佐知氏、小野英作氏など、かつて誌面制作に携わった主要メンバーが再集結し、かつての読者層を中心に大きな話題を呼びました。

『リラックス』を支えた人々

雑誌の個性を形成する上で重要な役割を果たしたのが、歴代の編集長とアートディレクターです。創刊からリニューアル期を率いた椎根和氏、そして休刊からの復刊、多角展開を推進した岡本仁氏が長期にわたり編集長を務めました。アートディレクターとしては、創刊期の細山田光宣氏、復刊後の小野英作氏、最終期の坂哲二氏がそれぞれの時代で誌面のビジュアルアイデンティティを構築し、『リラックス』独自の魅力的な世界観を生み出すことに貢献しました。彼らの存在なくして、『リラックス』がカルト的な人気を誇り、休刊後も語り継がれる雑誌となることはなかったでしょう。

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