リンカンシャーの花束

リンカンシャーの花束（Lincolnshire Posy）

パーシー・グレインジャーによって作曲された吹奏楽のための組曲です。指揮者エドウィン・フランコ・ゴールドマンの委嘱を受け、1937年に作曲されました。

概要

この組曲は、イギリス東部のリンカンシャー地方で採譜された6曲の民謡を基に構成されています。グレインジャー自身が蝋管式録音機で採譜した5曲と、民俗学者のルーシー・ブロードウッドが採譜した1曲が使用されています。グレインジャーは、民謡を歌っていた歌い手の個性を尊重し、その歌い方を再現しようと試みました。そのため、楽曲には不規則なリズムの変動や間延び、節回しが取り入れられ、変拍子や装飾音符が多用されています。1938年には、グレインジャー自身による2台ピアノ用編曲も発表されています。

初演

1937年3月7日に、ウィスコンシン州ミルウォーキーで開催されたアメリカ吹奏楽指導者協会全国大会にて、作曲者自身の指揮、ミルウォーキー・シンフォニック・バンドの演奏により公式に初演されました。その前にも、同年2月8日にマイアミ大学シンフォニック・バンドによって3曲が試演されています。

演奏時間

約15分

編成

一般的な吹奏楽編成

出版

1940年にアメリカのシャーマーから出版されました。しかし、ミスプリントが多かったため、現在ではフレデリック・フェネルによる校訂版が一般的に使用されています。

構成

全6曲から構成されています。

1. 第1曲 リスボン（船乗りの歌）Lisbon (Sailor's Song)
軽快な旋律が特徴的な楽曲。複調が用いられています。
2. 第2曲 ホークストウ農場（守銭奴とその召使い：地方の悲劇） Horkstow Grange' (The Miser and His Man - a local tragedy)
緩徐楽章であり、コラール風の歌が続きます。
3. 第3曲 ラフォード公園の密猟者（密猟の歌） Rufford Park Poachers (Poaching Song)
木管楽器のソリでカノン風に始まり、中間部では半音下降の動機が現れ、劇的に高揚します。
4. 第4曲 元気な若い水夫（恋人と結婚するために帰郷） The Brisk Young Sailor (who returned to wed his True Love)
快活なスケルツォ風の音楽で、木管に現れる主題が変奏されていきます。
5. 第5曲 メルボルン卿（戦いの歌） Lord Melbourne (War Song)
民謡の節回しを再現するため、冒頭には小節線がありません。
6. 第6曲 行方不明のお嬢さんが見つかった（踊りの歌） The Lost Lady Found (Dance Song)
パッサカリア風に変奏が重ねられていく楽曲です。

「リンカンシャーの花束」は、吹奏楽の重要なレパートリーとして、世界中で演奏されています。グレインジャーの音楽に対する探求心と、民謡に対する深い愛情が込められた作品と言えるでしょう。

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