リンム

リンム（Limmu）とは

リンムとは、古代アッシリアにおいて、1年交代で選ばれた名誉職です。リンムの名前は、その年を特定するためのエポニムとして用いられました。アッシリア人は、公的な書類に年を記録する際、リンムの名前を使用しました。紀元前890年から紀元前648年までのリンムのリストが発見されており、当時の年代を知る上で重要な資料となっています。

リンムの役割と選出

アッシリア王が即位すると、まず王自身がリンムに任命され、首都で行われる新年祭を主宰しました。その年の公的な年号は、「リンム○○の年」と記録されました。例えば、紀元前780年は「リンム・シャムシ・イル将軍の年」となります。

毎年、新しいリンムが選ばれましたが、その選出方法はくじ引きでした。しかし、選ばれるのは将軍（タルタン）、王宮の高官、主要な州の総督などに限られており、同一人物が連続して選ばれることはありませんでした。このことから、リンムの候補者は限られた範囲から選ばれていたと考えられます。

古アッシリア時代には、王自身がリンムになることはありませんでしたが、中アッシリア時代や新アッシリア時代には、王がリンムとなることもありました。時代が下るにつれて、リンムの選出順序も定式化され、即位後の王、タルタン（将軍）、ナギル・エカリ（布告官）、ラブ・シャケ（酌人長）、アバラク（家令）、そして各地の総督、という順番で選ばれることが一般的でした。

歴史学におけるリンムの重要性

リンムを記録した最初の粘土板が発見され、解読されたときから、リンムは他の同時代との年代を同期させる上で非常に重要な役割を果たすようになりました。例えば、19世紀にはすでに解読されていた粘土板（紀元前722年のサマリア破壊を記録したもの）から、イスラエル王国とユダ王国の王たちの系譜とリンムのリストを結びつけることが可能になりました。このように、リンムの記録は、古代史の年代を特定し、歴史的な出来事を正確に把握するための貴重な手がかりとなっています。

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