リヴィアン

リヴィアン・オートモーティヴ（Rivian Automotive, Inc.）とは

2009年に設立されたアメリカの電気自動車メーカーであり、自動車テクノロジー企業です。リヴィアン社は、独自の「スケートボード」と呼ばれるプラットフォームを使い、電動SUVとピックアップトラックを製造しています。これらの車両は、オンロードとオフロードの両方での走行を想定して設計されています。また、Amazonとの提携により、配達用電気バンの製造も手掛けています。さらに、アメリカとカナダにおいて独自の充電インフラを整備する計画も進行中です。

会社概要

リヴィアン社の本社はカリフォルニア州アーバインにあり、イリノイ州ノーマルに製造工場を構えています。その他、パロアルト、カーソン、プリマス、ウィットマン、カナダのバンクーバー、イギリスのウォーキングにも拠点を置いています。さらに、ジョージア州に50億ドルを投じて新たな工場を建設する計画も進められています。

歴史

創業と初期の展開

リヴィアン社は、2009年にロバート "RJ" スカリンジによって「Mainstream Motors」として設立されました。その後、「Avera Automotive」を経て、2011年に現在の「Rivian Automotive」に社名を変更し、電気自動車の開発と自動運転技術を事業の中心に据えました。創業者のスカリンジは、幼少期から自動車に親しみ、ポルシェのレストアを手伝う中で、自動車への情熱を育みました。同時に、自然を愛するアウトドア派であり、環境問題にも高い関心を持っていました。これらの経験が、EVメーカー設立の動機になったと言われています。スカリンジは、その行動力と持続性が評価され、バラク・オバマ大統領時代に「Champion of Change」賞を受賞しました。

初期のモデル計画の変更

当初、リヴィアン社はスポーツカー「R1」の開発を計画していました。ピーター・スティーブンスによって設計されたミッドエンジンハイブリッドクーペは、米国市場向けのプロトタイプとして開発が進められていました。レース用の「R1GT」も構想されていましたが、2011年末、リヴィアン社は、より大きなインパクトを与える企業努力を目指し、R1の計画を中止しました。

事業の転換と成長

2015年、リヴィアン社は大規模な投資を受け、ミシガン州とサンフランシスコ・ベイエリアに研究施設を設立しました。その後、リヴィアン社は事業を電動自動運転車に特化させ、関連製品のネットワーク構築を目指しました。また、プロトタイプをライドシェアリングやドライバーレスカー市場向けに調整しました。

デザインの刷新と工場買収

2015年から2016年にかけて、リヴィアン社は第2世代車両の開発に取り組んでいましたが、デザインの完成度が不十分であったため、2016年末から2017年にかけてデザインを刷新しました。ジープのトップデザイナーであったジェフ・ハムードを招聘し、彼のデザインによって、車両はモダンで洗練されたスタイルに生まれ変わりました。内装には木材が使用され、ダッシュボードの木製フレームが特徴的です。

2016年、リヴィアン社は三菱自動車工業の子会社がイリノイ州ノーマルで操業していた工場の買収交渉を開始し、2017年1月に1600万ドルで工場とその設備を買い取りました。この工場は、リヴィアン社にとって北米における主要な製造拠点となりました。三菱自動車が2015年まで稼働させていたこの工場は、SUV「アウトランダー・スポーツ」を生産していた近代的な工場でした。スカリンジCEOは、この買収を「非常に幸運」な出来事と語っています。

電動ピックアップトラックとSUVの発表

2017年12月、リヴィアン社は電動ピックアップトラックと電動SUVを発表し、それぞれ「A1T」、「A1C」という仮称で呼ばれました。プロトタイプ「A1T」は、元フォード社のチーフエンジニアの協力のもと開発され、リヴィアン社の「スケートボード」プラットフォームにフォード「F-150」のボディを載せたものでした。2018年11月、これらの車両は「R1T」、「R1S」と改名され、ロサンゼルスオートショーで公開されました。

IPOと資金調達

2021年9月、電動ピックアップトラック「R1T」の最初の出荷がイリノイ州ノーマル工場から開始されました。同年11月10日には、新規株式公開（IPO）で135億ドルの資金を調達しました。リヴィアン社は、これまでアブドゥル・ラティフ・ジャミール社、住友商事、Amazon、フォード社、ブラックロック社の運営ファンド、ソロス・ファンド・マネジメント社、フィデリティ・インベストメンツ社などから出資を受けています。リヴィアン社は、開発計画を一般公開するまで秘密主義を貫き、結果として予想以上の資金調達に成功しました。

フォード社との関係

フォード社は、リヴィアン社とのEV共同開発計画がありましたが、2021年11月に、出資関係を維持したまま共同開発計画は白紙撤回されました。これは、2019年の出資時と比較して、両社の方向性が変化したためです。この共同計画の一環として、リヴィアン社のプラットフォームを使用した電動の「リンカーン」が候補に挙がっていましたが、2020年4月に中止されました。この中止は、新型コロナウイルスの世界的流行が要因であるとされています。

現在の状況

2021年の「R1T」と「R1S」の生産台数は、目標の1200台に対して1015台でした。同年12月中旬時点で、この2車種は約7万1000台の事前予約を受けています。Amazon向けの配達用バンは、受注済みの10万台のうち最初の10台が2021年に引き渡されました。リヴィアン社は2022年から一般向けの配達用バンの受注を開始しました。

2022年には、メルセデス・ベンツとの間で、バン型EVの生産に関する戦略的提携を結ぶための覚書（MOU）に署名しました。両社は合弁会社を設立し、メルセデス・ベンツのEVプラットフォーム「VAN.EA」とリヴィアンのプラットフォーム「Rivian Light Van（RLV）」をベースにした車両を製造し、生産ラインを共有することにより投資効率化とコスト削減を図る予定です。

車種

R1T

「R1T」は、2021年に生産を開始したリヴィアン社初の市販モデルである電動ピックアップトラックです。アメリカの自動車雑誌『Motor Trend』から2022年の「Truck of the Year」に選ばれました。リヴィアン社は、北米で人気の高いピックアップトラック市場に、高級路線で参入しました。5人乗りで、754馬力を発揮し、航続距離はバッテリー容量によって370km～640kmです。フロントフード下はトランクとなっており、オプションでキャンプキッチンやルーフトップテントを搭載できます。

R1S

「R1S」は、電動SUVで、リヴィアン社の2番目の市販モデルです。広い室内空間と収納力が特徴で、7人乗りです。R1Tと同様に754馬力を発揮し、航続距離はバッテリー容量によって390km～660kmです。R1Tと同様に、キャンプキッチンをオプションで搭載できます。

Amazon配達用バン

2019年2月、リヴィアン社はAmazonと商業協定を締結し、同年9月には10万台の配達用電気バンを受注しました。2021年2月3日には、Amazonの配達用バンがロサンゼルスで最初の配達業務を開始しました。リヴィアン社とAmazonは、クラウドコンピューティング分野でも提携を強化しており、Amazon Alexaを車載化し、エアコンやトランクの操作を可能にする計画があります。

EV充電

リヴィアン社は、2023年までにアメリカとカナダに充電ネットワークを構築する計画を発表しました。急速充電器と低速充電器に加え、家庭用充電器の販売も予定しています。また、3500基のDC急速充電器からなる600か所の専用充電ネットワーク「Rivian Adventure Network」の設置を目指しています。さらに、小売店や宿泊施設、公園などに10,000基の充電器「Rivian Waypoints」を設置する計画です。2021年9月には、最初の「Waypoint」充電器がユタ州モアブ近郊に設置されました。

脚注

注釈

出典

外部リンク

公式ウェブサイト
Rivian公式twitter
Rivian公式YouTube

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