フィデリティ・インベストメンツ

フィデリティ・インベストメンツの概要

フィデリティ・インベストメンツ（Fidelity Investments）は、世界有数の投資信託運用会社です。1946年に設立されたFidelity Management and Research LLC（FMR LLC）を前身とし、エドワード・ジョンソン2世が主導権を確立して以来、同族経営が続いています。現在では、ミューチュアル・ファンドだけで300以上のファンドを抱え、4100万人以上の投資家と取引をしています。運用資産額は2023年時点で4.5兆ドルに達しています。

同社は、3つの基金部門に分かれており、高額所得層向けのサービスはボストン、平均所得層向けのサービスはメリマクに拠点を置いています。創業者のエドワード・ジョンソン2世が設立したピューリタンファンドは現在も運用されており、1962年にスタートしたマゼランファンドは、相場師として知られるピーター・リンチが世界的なファンドに育て上げました。

また、フィデリティ・マネジメント・カンパニー（FMC）を任されたD. George Sullivanも、ピーター・リンチと同様に成長株ファンドや試験ファンドの運用に尽力しました。FMCは1967年に、バミューダにFidelity International Fund NVを設立し、その後、会社形態を改めてFidelity International Limited（FIL）となりました。FILは、本国税法の適用を免れるために、1980年にFMRから法的に分離し、エドワード・ジョンソン3世が会長職を兼任しました。この際、FMRの無議決権株を一定数手放し、代わりにFIL株を取得し、他の国際組織からの資本参加を排除する定款を定めました。

成長と変革の歴史

1983年には、アクサ系列のエクイタブル生命保険からゲーリー・バークヘッドが副会長として入社しました。1986年には、カイザー・スチールの買収をめぐり、主要株主であるL.F.ロスチャイルドと対立し、最終的に放蕩経営者であったモンティ・リアルを失脚させました。また、ブラックマンデーの際には、最初の30分で売り全体の25%を占めたことで、大統領タスクフォースの調査対象となり、その後レイオフを実施しました。

1990年代には、ロスチャイルドやウィルバー・ロス、ドナルドソン・ラフキン・アンド・ジェンレットらと協力し、ドナルド・トランプの経営難を立て直しました。1994年からは、メイシーズとフェデレーテッドの合併を舞台裏で主導。1995年には、マゼランファンドがマイクロン・テクノロジの株を大量に売却したことで、株価を不当に下落させたとして集団訴訟を起こされましたが、1997年にフィデリティが1000万ドルを支払うことで和解しました。

2001年には、ベイルアウトしていたCOLT Telecomを2015年に買収。2002年には、ロッキード・マーティンの401k運用契約に関連して、エンロン破綻に責任のあるFrank Savageの役員留任を巡り、労働組合から批判を受けました。2004年には、ジェフェリーズ・グループの接待で豪遊していたトレーダー16人を懲戒処分し、2006年には、ウォール街当局がジェフェリーズに1000万ドル近い罰金を科しました。

世界金融危機では、ウルトラショートボンドファンドで損失を計上し、リスク説明不足で株主から訴訟を起こされました。また、米司法省と証券取引委員会がフィデリティの資金洗浄防止対策を調査することになりました。2010年には、債券部門にゴールドマン・サックス出身の財務官僚を迎え、2012年には、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンの幹部を製品開発に雇用しましたが、メロンによる手数料操作で株主に損害を与え、外国為替相場の調整に関与した疑惑も浮上しました。2013年からは従業員の401kがフィデリティを訴えるようになり、2014年には、内部告発保護法が公開会社の従業員にも適用されるという最高裁判決で敗訴しました。2015年には、金融犯罪防止措置の不備で制裁金を課されました。

2016年には、アリババグループの未公開株配布に関与したことが発覚し、ファンドマネージャーに対する報酬の与え方が問題視されました。その後、フィデリティは株主への分配金を引き下げました。

近年の動向

2023年11月には、アビー・ジョンソンが父親のエドワード・ジョンソン3世から会長職を引き継ぎました。

フィデリティ・インベストメンツは、長年にわたり投資業界で重要な役割を果たしており、その動向は今後も注目されます。

参考文献

Diana B. Henriques, Fidelity's World: The Secret Life and Public Power of the Mutual Fund Giant, Scribners, 1995（『フィデリティ 史上最強の投信王国』 日本経済新聞社 1998年）

関連項目

投資信託
ミューチュアル・ファンド
バークシャー・ハサウェイ
ステート・ストリート
メロン財閥
アスター家
ロスチャイルド家

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