リ・チュニ

リ・チュニ（李春姬）について

リ・チュニ（朝: 리 춘히、李 春姬、1943年7月8日 - ）は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の朝鮮中央放送委員会に所属する、著名な女性アナウンサーです。彼女は、江原道通川郡の出身で、平壌演劇映画大学を卒業しています。

キャリア

1943年、労働者の娘として生まれたリ・チュニは、恵まれた家格により高等教育を受ける機会を得ました。チョグンシル高級学校を経て平壌演劇映画大学に進学、卒業後は国立演劇団に入団しました。女優として活動する傍ら、朝鮮中央放送委員会のアナウンサー候補に選ばれ、厳しい選考を経て1971年2月にアナウンサーとしてデビューしました。1974年のカラー放送開始とともにテレビアナウンサーとしても活動を始めました。

彼女は、金日成、金正日、金正恩といった指導者の教示報道や、重要な行事の報道、公式声明の発表などを担当し、北朝鮮における報道の顔として広く知られるようになりました。彼女が登場するニュースは、北朝鮮国民にとって「重大な発表がある」という合図のような意味合いを持ちます。しかし、常にテレビに出演しているわけではなく、2008年には1ヶ月ほど姿を見せなかった時期もありました。2011年10月を最後に一時的に姿を消しましたが、同年12月に金正日死去の発表を喪服姿で伝えるという形で復帰しました。

2012年以降は、若い女性アナウンサーの登用も進んでいますが、ミサイル発射や核実験といった重要な報道では、依然としてリ・チュニが起用されています。一時、引退説も報じられましたが、現在も重要な場面で登場し、その存在感を示しています。

人物

リ・チュニという名前は、日本語では「リ・チュンヒ」と表記されることが多いですが、実際の発音は「リ・チュニ」に近いとされています。漢字表記は「李春姬」ですが、北朝鮮では原則として漢字表記は用いられません。ただし、2022年には朝鮮中央通信の日本語版で漢字表記が使用されたこともあります。また、姓の「李」は、北朝鮮では「リ」と、韓国では「イ」と発音されるのが一般的ですが、韓国でも北朝鮮の表記通り「リ」と掲載されることがあります。

待遇

リ・チュニは、北朝鮮のアナウンサーの中で最高位にあたる「人民放送員」の称号を与えられており、これは現在6名しかいないとされています。また、朝鮮労働党中央委員会からは労力英雄の称号も授与されています。彼女は、国から最高の待遇を受けており、平壌の高級住宅街に家を与えられたり、金正恩自ら彼女の家を訪問したりといった特別扱いを受けています。2022年には、「二重労働英雄」の称号も授与されました。

風貌

リ・チュニは、対外向け放送では、民族衣装であるチマチョゴリを着用することが多く、特に声明発表時には、その姿が際立ちます。国内向けの放送では、スーツ姿で出演することもあります。彼女のヘアスタイルやファッションは、北朝鮮の特権階級の中高年女性の間で流行の先駆けとなっており、彼女が利用する美容室や、国から提供される衣装は、常に注目を集めています。ただし、これらの流行は、一般国民にはあまり浸透していません。

報道手法

彼女は、報道内容によって声のトーンや話し方を自在に変えることができ、指導者に関する報道では荘厳で丁寧な語り口を、アメリカや韓国、日本などの敵国に関する報道では強い語調で非難するなど、状況に応じた表現を使い分けます。特に、声明報道の際には、強い語気で威圧的な印象を与えることで知られています。

教示報道

指導者一族に関する報道では、最上級の敬語を用い、指導者の言葉や行動を最大限に賞賛します。時には、感動のあまり声を震わせながら読み上げることもあります。指導者の訪問は、実際の訪問日から時間が経ってから報道されることが多く、訪問日時も明確には述べられません。

重要行事報道

太陽節や光明星節などの重要な祝日、核実験やミサイル発射の成功といった重要な出来事の報道には、必ず彼女が登場します。ただし、近年は、若いアナウンサーも起用されるようになり、彼女の登場頻度は減少しつつあります。

公式文献報道

政府や軍の声明、外交関連の声明といった公式文献報道では、強い文語表現を使い、威圧的な態度でニュースを読み上げます。特に、敵国を非難する際には、絶叫調で語気を強めることが特徴です。過去には、板門店での南北協議の決裂を報じる際、「ソウルは火の海になる」という言葉をそのまま読み上げたことが有名です。

月刊画報『朝鮮』記事

2008年には、北朝鮮の雑誌で彼女の特集記事が掲載され、その中で、彼女の日常生活や、これまでの功績、国からの特別待遇などが紹介されました。彼女が、国家から与えられた高級住宅や乗用車を使用していること、金日成の激励を胸に努力を重ねたこと、金正日から労力英雄の称号を授与されたことなどが語られています。

リ・チュニは、その独特な報道スタイルと存在感で、北朝鮮における報道の象徴的な人物として、広く知られています。

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