リーブラ

リーブラ (libra)

リーブラは、古代ローマで誕生した質量と通貨の単位であり、その名はラテン語の「天秤」を意味します。この単位は、さらに星座のひとつである「てんびん座」の学名にも用いられています。古代ローマでは、リーブラはアス (as) とも称され、主に質量の測定に使われていました。古代ローマが滅亡した後も、リーブラはヨーロッパ各地で残り、特にスペイン語やポルトガル語圏では今も使用されています。

質量としてのリーブラ

リーブラは、今日でもスペインやポルトガルのようなイベロアメリカ地域で見られます。フランス語圏では「リーヴル（livre）」、イタリア語圏では「リッブラ（libbra）」と呼ばれ、これらの言葉はすべてリーブラから派生しています。英語圏では「ポンド（pound）」と呼ばれる単位にシフトしましたが、その単位記号「lb.」にはリーブラの名残が見られます。言い換えれば、スペイン語の「リーブラ」は英語の「ポンド」と同義であり、逆に英語のポンドはスペイン語のリーブラと訳されています。

かつては、1リーブラは約0.3274 kgに相当しましたが、現在の標準的なリーブラの質量は国ごとにわずかに異なります。ほとんどの国においては、約0.46 kgとなっており、これはポンドの0.4536 kgよりもやや重い値です。また、スペインやポルトガルなどの地域では、1リーブラは16オンサ（西：onsa、葡：onça）に相当します。これはリーブラとポンドがそれぞれ16オンスに分割される点で共通していますが、必ずしも同じ起源を持つわけではありません。

通貨としてのリーブラ

通貨においても、リーブラは古代ローマで重要な役割を果たしていました。当初、リーブラは質量で表される銀貨に相当し、その価値は質量1リーブラに等しいものでした。一方、アスは質量1に対応する青銅貨でしたが、リーブラと比較するとその価値はかなり低下していました。リーヴル（フランスの古い通貨）やリラ（イタリアの通貨）なども、リーブラの変形から名付けられたものであり、通貨の単位としてのポンド（英語圏など）にも同じ起源が見られます。

ロシアのルーブルはリーブラとは無関係ですが、近代のペルーでは1898年から1931年までリーブラが補助通貨として用いられ、英ポンドにペッグされる形で1リーブラは1英ポンドに等しいとされていました。この時、通常の通貨であるペルー・ソルとの換算は10ソルが1リーブラに相当しました。

現代のリーブラ

さらに2019年6月には、米国のFacebookにより新たな仮想通貨「Libra」が発表されましたが、その後「Diem」に改称されました。この仮想通貨は、デジタル経済の進展に寄与することを目的としていますが、その発表でもリーブラという名称が使われたことから、古代の単位がいかに現代の文脈においても影響を及ぼしているかがうかがえます。

このように、リーブラは長い歴史を持ち、古代から現代まで様々な形で人々に影響を与え続けています。

もう一度検索