リー・J・コッブ

リー・J・コッブ: 舞台と映画で輝いた名優

リー・J・コッブ（本名: Leo Jacoby）は、1911年12月8日、アメリカ・ニューヨークに生まれた著名な俳優です。ルーマニアやロシアの血を引くユダヤ系の家庭に育った彼は、父が新聞の植字工だったため、労働者階級の家族での生活が多くの影響を与えました。コッブはニューヨーク大学で学び、1934年には映画デビューを果たします。その後、1935年にはマンハッタンを拠点とする劇団「Group Theatre」に参加し、舞台活動を本格化させました。

特に、アーサー・ミラーの名作『セールスマンの死』における主人公ウイリー・ローマンの演技が彼の名を広めるきっかけとなりました。この作品はアメリカ演劇の金字塔とも言われ、コッブはその中心的な役を通じて存在感を示しました。舞台だけでなく、映画でも多くの作品に出演し、その実力を存分に発揮しました。

一方で、彼のキャリアには試練も多くありました。1951年、同じ俳優のラリー・パークスが下院非米活動委員会で証言を行った際、コッブの名前も取り上げられました。彼は2年間、委員会での証言を拒否しましたが、最終的に圧力を受けて20名の元共産党員の名前を挙げることになりました。この出来事は、当時のハリウッドでの共産主義恐怖症の象徴的な事例として知られています。

コッブは、その後も数々の映画で印象的な役を演じました。1954年の映画『波止場』ではギャングのボス役を、1958年には『カラマゾフの兄弟』で家長フョードルを演じました。これらの演技で、彼はアカデミー助演男優賞に二度ノミネートされています。

晩年にはホラー映画『エクソシスト』でのキンダーマン警部役も記憶に残ります。彼の演じた役はいつも多面的で、観客に深い印象を与え続けていました。1976年に心臓発作で亡くなるまで、コッブは尽きることのない情熱と演技力で映画界に多大な貢献をしました。

また、彼には興味深い逸話もあります。黒澤明の名作『羅生門』がアメリカで公開された際、コッブはリトル・トウキョウのリンダ・リー劇場に連日足を運んで観賞していたそうです。監督の淀川長治とも対面し、「生きてきた中でこんな映画を観たことがない」と激賞するシーンがあり、コッブの映画に対する真摯な姿勢が伺えます。

主な出演作品

• - 映画: 『波止場』, 『カラマゾフの兄弟』, 『エクソシスト』 など
• - テレビシリーズ: さまざまな作品に出演

受賞歴

• - アカデミー賞

- ノミネート: 1955年『波止場』、1959年『カラマゾフの兄弟』

• - ゴールデングローブ賞

- ノミネート: 1958年『十二人の怒れる男』、1964年『ナイスガイ ニューヨーク』

コッブの演技と彼の人生における葛藤は、今なお多くの人々に感動を与えています。彼の功績は、アメリカ演劇と映画の歴史の中で色褪せることのないものです。

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