ルイスの転換点

ルイスの転換点

ルイスの転換点（Lewisian Turning Point）とは、工業化が進む過程において、農業セクターが抱える余剰労働力がついに枯渇してしまう現象を指します。この概念は、イギリスの経済学者アーサー・ルイスによって提唱され、特に開発経済学で重要な役割を果たしています。

概要

歴史的に見ても、工業化前の社会は主に農業部門が支えていました。この時期、農業部門では労働力の過剰が存在し、農業従事者は安定した所得を得ることが難しい状況にありました。しかし、工業化が始まると、農業から工業、そしてサービス部門へと余剰労働力が移動し、経済は急成長を遂げます。この過程において、工業化が着実に進んだ場合、農業部門の労働力は次第に減少し、その結果、工業部門が農業部門からの雇用を吸収することになります。これがルイスの転換点と呼ばれる瞬間です。

日本においては1960年代後半にこの転換点に到達したとされています。この時期、工業部門の成長が加速し、農業から都市部の産業へと労働力の移動が集中しました。

経済的な影響

ルイスの転換点を越えた後は、古典派経済学やマルクス経済学で見られる、賃金が生存に必要な財の生産力によって決定されるという考え方が崩れます。つまり、労働市場は需要と供給の競争によって賃金が決定されるようになり、その結果、賃金率は大きく上昇します。これは、同時に利潤率の縮小を意味し、経済構造は設備投資や技術移転に依存する現状から脱却する必要があります。しかし、経済の自発的な変革がなければ、中所得国の罠に陥るリスクが高まります。特に1970年代から1980年代にかけての南米諸国のスタグフレーションのように、経済が停滞する可能性があります。

批判

この概念に対する批判点として、工業化による農村から都市への人口移動が、自発的ではない失業者や「産業予備軍」を生む可能性を軽視していることが指摘されています。さらに、農村が労働力供給源として重要であるという見方が過大評価され、工業部門での恒久的な完全雇用を前提としていることも批判されています。

結論

ルイスの転換点は、工業化における重要な概念であり、その後の経済成長に多大な影響を与えています。しかし、その背景には多くの複雑な問題や懸念が存在し、単純に成功を評価するだけではないことを忘れてはなりません。この転換点を経た社会は、新たな挑戦に直面しながら経済の自立を目指すことになります。

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