スタグフレーション

スタグフレーションとは

スタグフレーションは、経済の停滞と物価の上昇が同時に起こる状態を指します。この用語は、1965年にイギリスの下院議員・イアン・マクロードによって初めて用いられました。通常、デフレーションと不況は相関関係にあるものですが、スタグフレーションでは不況の中で物価が持続的に上昇するため、経済にとって厳しい状況をもたらします。

スタグフレーションの原因

スタグフレーションが発生する原因はいくつかあり、それぞれ異なるメカニズムで作用します。主な要因は以下の通りです。

1. 供給ショック

供給曲線が左方にシフトすることで、商品価格が上昇する一方で取引量が減少します。これは、生産コストの増加や原材料費の高騰、あるいは自然災害や戦争による供給能力の低下といった外的要因によって引き起こされます。1973年と1979年のオイルショックは、この供給ショックが原因となって多くの先進国がスタグフレーションに直面しました。

2. 物価と賃金のスパイラル

このメカニズムでは、物価が上昇する中で労働者が実質賃金の低下に対抗しようと賃上げを要求し、その結果さらに物価が上昇するという悪循環が発生します。景気が伸びている状況で労働需給が逼迫し、名目賃金が上昇することで物価も上がる現象が見られます。

3. 景気後退と通貨価値の下落

経済が停滞しているにもかかわらず、通貨の価値が下落することでインフレが進行することもスタグフレーションの一因です。財政ファイナンスが行われることで、政府が通貨を供給過多にするケースもこの現象を引き起こすことがあります。

4. 税制による影響

累進課税の下でのコストプッシュインフレが、消費や投資活動を抑制することがあります。企業が減価償却費の実質的な価値を減少させることも、経済の抑制要因として働きます。

スタグフレーションへの対策

スタグフレーションに対して取られる対策は、主に以下の3つが挙げられます。

1. 金融政策の引き締め

市場の流通量を減少させるために金利を上昇させる金融引き締めが行われることがありますが、これは特に借入に依存している中小企業にとっては深刻な影響を及ぼす可能性があります。

2. 需要抑制策

政府が増税を行ったり、支出を削減したりすることで総需要を減少させる政策も考えられますが、この場合も失業率が増加するリスクを孕んでいます。

3. 供給拡大策

公共投資や規制緩和を通じて供給力を高めることが進められ、中でも1980年代のアメリカやイギリスでの各種改革が効果を上げた例が見て取れます。ただし、これも長期的な視点に立った取り組みが求められます。

スタグフレーションの歴史的事例

スタグフレーションは1970年代に特に深刻な問題として顕在化しました。アメリカや日本を含む多くの国がインフレと高失業率に悩まされました。

イギリス

イギリスでは、サッチャー首相による経済政策によってスタグフレーションに対抗しましたが、これは失業者を増加させる要因ともなりました。

アメリカ

アメリカでは、1979年以降の第2次オイルショックがスタグフレーションを悪化させましたが、1980年代にはレーガノミクスにより高いインフレ率を抑制しました。

日本

一方、日本は第一次オイルショックによる影響を受けるも、比較的軽微な影響で済みました。協調的な労使関係や電源三法に基づくエネルギー政策が、この状況を支えたとされています。

総括

スタグフレーションは、経済にとって非常に厄介な現象です。その原因を理解し、適切な対策を講じることが求められます。歴史を振り返りながら、経済政策のあり方を考える上で重要なテーマです。

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