ルイ・ゴンザレス・デ・クラビホ

ルイ・ゴンザレス・デ・クラビホ（生年未詳 - 1412年4月2日）は、カスティーリャ王国の外交官であり、作家として知られています。彼はエンリケ3世の命を受け、1403年から1405年にかけてティムール朝の創始者であるティムールのもとへ使節として派遣されました。

サマルカンド使節団の旅路

クラビホは、ムハンマド・アル＝カーズィー、アルフォンソ・パエス・デ・サンタ・マリーア、ゴメス・デ・サラサールらとともに、1403年5月21日にカディスを出航しました。一行は地中海を渡り、マヨルカ島、シチリア、ロドス島を経由してコンスタンティノープルに到着。その後、黒海を渡り、現在のトルコ、アルメニア、イラン、トルクメニスタンを経て、ウズベキスタンへと向かいました。彼らは1404年にテヘランを訪れています。

当初、使節団はグルジアでティムールに謁見する予定でしたが、悪天候と船の難破によりコンスタンティノープルに引き返すことを余儀なくされ、1403年から1404年の冬をそこで過ごしました。コンスタンティノープルから黒海を越え、再び陸路を進みましたが、ティムール朝の使節の騎乗速度についていけず、頻繁に宿営を重ねました。

サマルカンドでの滞在

度重なる宿営の末、クラビホ率いるカスティーリャ使節団は1404年9月8日にティムール朝の首都サマルカンドに到着しました。クラビホは、当時のティムール朝の宮廷について詳細な記録を残しており、西洋にその様子を伝える役割を果たしました。彼は、ティムール朝において建設と再建築が繰り返される様子を目の当たりにし、以下のように記述しています。

ティムールが彼の母や妻のために建設を命じたモスク...は我々がサマルカンドの市中を訪れた中で最も格調高い建築物である。しかし、完成直前になってティムールがその入口の門を見咎め、ティムールはこの入口はあまりに高さが低すぎるため取り壊す必要があると言い出した。

クラビホは庭園でティムールに謁見し、訓練された象や宝石で飾られたテントなどを見たと記述しています。使節団はサマルカンドに数ヶ月滞在し、1402年7月にティムール朝がアンカラの戦いでオスマン帝国に勝利したことに対して、カスティーリャを代表してティムールに祝福を述べました。当時、オスマン帝国はハンガリーにまで領土を拡大し、西洋諸国にとって脅威となっていたため、この戦いはエンリケ3世とシャルル6世にティムールとの外交関係を深めさせました。

ティムールの体調が悪化したため、エンリケ3世へのティムールからの手紙を受け取ることはできませんでしたが、カスティーリャ使節団は1404年11月21日にサマルカンドを離れ、約1年半後の1406年3月に帰国を果たしました。

道中記『タメルラン大帝史』

クラビホが残した旅行記は、『タメルラン大帝史』として1582年に出版されました。この書物は、15世紀初頭のティムール朝の様子を知る上で貴重な資料であり、1859年には英語に翻訳されています。

彼の記録は、当時の社会情勢や文化、建築物など、多岐にわたる情報を提供しており、歴史研究において重要な役割を果たしています。

参考文献

Ruy González de Clavijo. La embajada a Tamorlán. Francisco López Estrada, ed. (Madrid: Castalia, 1999).
Ruy Gonzalez de Clavijo, Embassy to Tamerlane tr. G. Le Strange (1928).
山田信夫訳『チムール帝国紀行』 桃源社、1967、新装版1979
リュシアン・ケーレン編、杉山正樹訳『遥かなるサマルカンド』 原書房、1998
* 川口琢司『ティムール帝国』 講談社選書メチエ、2014

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