ルイ・サンローラン

ルイ・サンローラン（Louis St-Laurent）は、1882年2月1日に生を受け、1973年7月25日にこの世を去ったカナダの政治家、そして法律家です。日本では「ルイ・ステファン・サン・ローラン」と表記されることもあります。

彼はカナダのケベック州南東部で生まれ育ちました。高等教育機関であるラヴァル大学で法律を修め、1905年には弁護士資格を取得しました。その後、1914年には母校ラヴァル大学の教授に就任するなど、法曹界で確固たる地位を築きました。

弁護士、そして大学教授として活躍した後、1941年12月、当時の首相ウィリアム・ライアン・マッケンジー・キング率いる内閣の司法大臣兼検事総長として政界への第一歩を踏み出しました。翌年2月に行われたケベック東選挙区の補欠選挙で庶民院（下院）議員に初当選を果たします。1946年9月には外務大臣に就任し、国際舞台でも手腕を発揮しました。

1948年、長年にわたり自由党を率いてきたマッケンジー・キング首相が引退を表明すると、その後継を決める党首選挙が行われ、サンローランはこれに勝利しました。こうして彼は自由党の新たなリーダーとなり、同時にカナダの第12代首相に就任しました。カナダの歴史上、フランス系カナダ人として首相の座に就いたのは、彼が二人目でした。

首相としてのサンローランは、強力なリーダーシップを発揮しました。1949年と1953年の総選挙では、自由党は連続して圧勝し、庶民院における安定多数を維持しました。彼の政権下、カナダは国内外で重要な役割を果たします。

外交面では、ソビエト連邦とその影響力拡大に対し強い警戒心を持ち、強硬な反共政策を推進しました。その表れとして、1949年の北大西洋条約機構（NATO）創設時にはカナダを原加盟国として参加させ、西側諸国との安全保障体制を強化しました。また、朝鮮戦争勃発時には国連軍としてカナダ軍を派遣するなど、国際的な紛争解決にも積極的に関与しました。

内政面では、国民生活の安定と国の発展に資する政策を推進しました。個人が老後の備えを非課税で行える登録退職貯蓄年金（RRSP）制度を創設したほか、カナダ全土を結ぶ壮大なトランスカナダ・ハイウェイ、大西洋と五大湖を結ぶ重要な水路であるセントローレンス海路、そして東西を結ぶエネルギー輸送路であるトランスカナダ・パイプラインといった、国家の基盤となる大規模公共事業を次々と実現させました。これらのプロジェクトは、カナダの国土統合と経済発展に大きく貢献しました。

首相として国民からの人気は高く、その穏やかな人柄から親しみを込めて「ルイおじさん」（Uncle Louis）と呼ばれました。しかし、晩年の政権運営においては、特にトランスカナダ・パイプライン建設計画を巡る国会審議において、与党による強引な議事進行が見られたことが国民の批判を招き、「傲慢だ」との印象を与えてしまいました。

1957年の総選挙では、事前の予想に反し、ジョン・ディーフェンベーカー率いる進歩保守党に僅差で敗北しました。この結果、実に22年間にわたり続いた自由党政権は終焉を迎えることとなりました。選挙での敗北を受け、サンローランは直ちに政界からの引退を表明し、再び弁護士としての道を歩み始めました。

彼の息子であるジャン＝ポール・サンローランも、1950年代に庶民院議員を務めました。カナダ沿岸警備隊に所属する砕氷船「ルイ・S・サンローラン」は、彼の功績を称えて名付けられています。

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